【ソウル聯合ニュース】韓国軍合同参謀本部のイ・ソンジュン広報室長は10日の記者会見で、北朝鮮が韓国に向けて飛ばしたごみなどをぶら下げた風船について、撃ち落とせば流れ弾や汚染物質の拡散などの危険が生じるため、落下するまで待ち、落下後に回収するのが最も効率的だと説明した。

 軍の関係者も、空中で撃ち落とせば使用した弾丸の着弾先に危険が生じるほか、汚染物質が拡散する可能性もあり、また風船がぶら下げていたものが落ちて人や財産に被害が生じる可能性があると説明した。

 北朝鮮が韓国側に飛ばしている風船は約10キロのごみをぶら下げ、3キロ上空を秒速5メートルの速度で飛行すると観測されており、高度の関係から撃ち落とすためには小銃ではなく、バルカン砲や自走式対空砲を使用する必要がある。

 ただバルカンや対空砲は威力が強いため風船を撃ちそこなったり、撃ち落としたとしても人や車両、建物などが被害を受けたりする恐れがあるという。またごみ風船が非武装地帯(DMZ)を越える前にバルカン砲や対空砲で迎撃すれば、弾が北朝鮮地域に着弾し、偶発的な衝突につながる可能性もある。

 軍関係者は、風船を撃ち落として10キロほどの積載物が地上に落ちれば、衝撃力は相当なものだろうと指摘。生物化学兵器などが入っていた場合には空中で破裂させれば広い地域に拡散し、被害をさらに増大させる恐れもあると説明した。

 別の関係者は「空中にある風船の積載物に危険物質があるかないか確認が難しい」として「地上に落下した後に回収するのが最も安全で効率的な方法」と強調した。

 大統領室高官も2日、ごみ風船を境界地域付近で撃ち落とす案について「空中で破裂させた場合、汚物が拡散して被害地域が広がり、処理がさらに複雑になる恐れがある」とし「さまざまな検討の末、落下後に回収するのがより安全だと判断した」と説明した。

 一方、一部の政治家は境界地域で撃ち落とすべきであると主張している。

 元軍人で最大野党「共に民主党」の金炳周(キム・ビョンジュ)国会議員はこの日放送されたラジオ番組で、ごみ風船が4回にわたり韓国側に飛ばされたが、軍と政府は銃1発も撃つことなく手をこまねいていたとし、「われわれの戦線が突破された」と批判した。

 劉承ミン(ユ・スンミン)元国会議員(与党「国民の力」所属)も交流サイト(SNS)で「北の風船が全国各地まで来てもぼんやりと眺めているだけなのがわが国の情けない国防」とし「わが軍は風船が多数の国民が居住する地域まで来る前に撃墜しなければならない」と主張した。

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