【ソウル聯合ニュース】韓国大統領室は9日、緊急の国家安全保障会議(NSC)を開き、北朝鮮が韓国に向けて汚物などをぶら下げた大型風船を飛ばしたことへの対抗措置として、同日中に南北軍事境界線付近に拡声器を設置し、北朝鮮への宣伝放送を再開することを決めたと発表した。拡声器による宣伝放送は北朝鮮軍兵士に与える心理的影響が大きいとされ、強力な心理戦の手段とされる。韓国は南北軍事境界線付近での軍事訓練も再開する予定で、北朝鮮が対抗措置を取る場合は軍事的な緊張が高まる恐れがある。

 大統領室は「われわれが取る措置は北の政権には耐え難いかもしれないが、北の軍と住民には光りと希望を届けるだろう」と強調した。北朝鮮が敏感に反応する拡声器を使った宣伝放送は北朝鮮がより深刻な挑発行為を行う場合に備えた切り札として残す可能性も取り沙汰されたが、北朝鮮が8日、先月末以降3回目となる風船散布を行ったことを受け、強力な対応が必要と結論付けた。

 拡声器による宣伝放送は1963年に始まり、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権だった2004年の南北軍事合意により中止された。その後、李明博(イ・ミョンバク)政権や朴槿恵(パク・クネ)政権の際、核実験など北朝鮮による挑発への対抗措置として一時再開されたことがある。

 拡声器は2018年4月の南北首脳による「板門店宣言」を受けて撤去されるまで最前線に固定式が24台設置され、移動式拡声器は16台あった。固定式拡声器は倉庫に保管されており、移動式も近隣の部隊で保管されている。

 韓国政府は4日の閣議で18年に結んだ南北軍事合意の効力停止を決め、宣伝放送などへの制約を解いた。軍当局は宣伝放送を再開する準備を整えたようだ。

 過去に、宣伝放送は韓国の政治制度が北朝鮮より優れていることや北朝鮮体制の残酷さを伝えたほか、韓国の歌謡曲や気象情報などを流していた。国防部関係者は「今回再開される放送は過去の内容と同じとみられる」と述べた。

 高出力スピーカーを利用した宣伝放送は10~30キロ先まで聞こえるとされる。北朝鮮の兵士や住民を動揺させる効果があり、北朝鮮は敏感に反応してきた。南北対話が行われる際に、北朝鮮は強く中止を求めた。

 15年に南北軍事境界線にある非武装地帯(DMZ)の韓国側に北朝鮮軍が埋設した地雷が爆発する事故が発生したことを受け、宣伝放送を再開した際は北朝鮮が拡声器に向けて砲撃を行っている。大統領室が「今後、南北間の緊張の高まりの責任は全面的に北側にある」と警告したのは北朝鮮の追加挑発を念頭に置いたものとみられる。

 韓国軍は今月中に再開する計画だった軍事境界線付近と西北島しょ一帯での訓練の準備も急ぐ方針だ。白○(○=令に羽)島や延坪島など西北島しょに配備された海兵隊の自走砲K9による海上砲撃や軍事境界線から5キロ以内にある射撃場で陸軍の砲兵射撃訓練が再開される。これらの訓練は南北軍事合意によって18年から中止されていた。

 海兵隊と陸軍は訓練の再開に長い時間はかからないとしており、近く訓練が実施される見通しだ。

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