▲イラスト=UTOIMAGE

 第69回顕忠日(6月6日、国を守るため犠牲になった人々を追悼する日)追悼式を前に、国立ソウル顕忠院(国立墓地)が「無名勇士の追悼碑」に中国製のムクゲの造花を依然として使用していることが5日、明らかになった。韓国戦争(朝鮮戦争)時、韓半島(朝鮮半島)の共産化を阻止しようとして戦死した韓国軍・国連軍兵士は約17万8000人。その相当数が30万人にのぼる中国共産軍によって死亡した。このため、「顕忠院当局が経費節減などを理由に中国製造花を使い続けるのは問題だ」という声が上がっている。

 ソウル市銅雀区の国立ソウル顕忠院「顕忠塔」の地下には、「護国英霊無名勇士碑」がある。戦死者たちの魂が天に昇る姿を彫刻した「英顕昇天像」前に建てられたものだ。像の下には韓国戦争中に戦死したが、身元が確認できていない5831柱(今年3月現在)が安置されている。ところが、この碑石のそばに国防部長官と国立ソウル顕忠院長の名義で一年を通して設置されている造花がすべて中国製であることが分かった。

 顕忠日の前日にあたる5日に訪れたところ、設置されていた人の背丈ほどの花輪には「追慕(追悼)」と書かれていた。布で作られた紫色のムクゲの造花約140輪が花輪状に供花スタンド2基にそれぞれ刺さっていた。ところどころ糸が飛び出していて、花びらの先端もギザギザしていた。市民団体「ムクゲ連帯」のチョン・ヨンヒ常任理事は「韓国で作られる韓紙のムクゲの造花は韓国の品種に似せてあるが、この造花は一体、どこのどんな品種なのか分からない」と言った。

 一部の人々からは「顕忠院は経費節減を理由に無名勇士碑で中国製造花を使っているのではないか」という指摘も出ている。中国製は1束(10輪)1300ウォン(約150円)、韓国製は3700ウォン前後だ。だが、顕忠院側は「中国製であることは事実だが、コストのためではない。2021年から使用していた花輪であり、当時は中国製しかなかった」と説明している。また、「すぐに取り換える予定はないが、今後は韓国製にする」とも言った。韓国国防部は「今日(5日)中に回答するのは難しい」と述べた。

 顕忠院の中国製造花を巡る議論は、今回が初めてではない。2022年の国会国政監査の時も、約5万4000基の墓所に数億ウォン台の予算をかけて中国製造花を供えて、国会から指摘された。与党は当時、「6・25南侵(朝鮮戦争開始)の背後にいる中国から輸入した偽物の花を献花するのは国の品格を損なう」と述べた。だが、それにもかかわらず、2年近く無名勇士の追悼に中国製造花を使用し続けていることになる。

 世界の主要国はそれぞれ、無名勇士たちに対して国として最高の儀典を提供している。英ウェストミンスター寺院の床にある無名戦士の墓は、国王をはじめ誰も踏み入ることができないことで有名だ。王室の結婚・葬儀の時も新郎・新婦や葬列が歴代国王や偉人の墓碑に踏み入ることはあっても、この無名戦士の墓には決して足を踏み入れない。米アーリントン国立墓地の無名勇士の墓を守る衛兵は、雪や雨はもちろん、ハリケーンが来てもその場を離れない。

キム・ヨンウ記者

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