▲韓国軍が独自開発を進めてきた「長距離地対空誘導兵器(L-SAM)」の発射の様子。/国防部

 韓国軍が独自開発を進めてきた「長距離地対空誘導兵器(L-SAM)」が最近、「戦闘用適合判定」を受け、開発が完了したことが分かった。複数の韓国政府消息筋が5月24日に伝えた。韓国型THAAD(高高度防衛ミサイル)と呼ばれるL-SAMは来年から量産手続きに入り、数年以内に実戦配備される見込みだ。要撃高度が4万メートルから6万メートルというL-SAMが実戦配備されれば、THAAD(4万メートルから15万メートル)、パトリオット(1万5000メートルから4万メートル)、天弓II(1万5000メートルから3万メートル)で構築されている現在の韓米連合防空網はさらにきめ細かくなり、北朝鮮の核の脅威への対応能力が強化されるだろう-という評価が出ている。

 米軍で運用しているTHAADとは異なり、L-SAMは韓国軍が独自運用することになる。これまで韓国軍は、高度4万メートル以上の弾道ミサイル迎撃は米軍のTHAADに依存しなければならなかったが、L-SAMの開発で防御膜がもう1枚重なったことになる。韓国軍はこれと共に、高度100キロから1000キロで迎撃を行うSM-3の配備方針も明らかにし、上空60キロから150キロで北朝鮮の極超音速ミサイルを迎撃する能力を備えた「L-SAM II」も2020年代後半の戦力化を目標に開発する方針を示した。北朝鮮がロシアとの軍事技術交流を加速させ、核・ミサイル能力を強化している今、北朝鮮のミサイルを上層と下層で多層的に迎撃する確率を最大限高めたいというわけだ。

 今回独自開発が完了したL-SAMは、国防科学研究所(ADD)主導で研究・開発が行われた。ハンファ・LIGネクスワンなど韓国国内の企業がレーダー・誘導装置・駆動装置などを開発した。2014年に事業推進が決定された後、10年かけて開発が完了したのだ。文在寅(ムン・ジェイン)政権時代には、北朝鮮との関係を考慮して試射が数カ月延期されたこともあった。だが昨年までに4回にわたり標的要撃試験を終え、今年3月に非公開の試射が成功裏に行われたことも判明する中、今回戦闘用適合判定を受けることになったという。

 L-SAMに使われているSバンド多機能レーダーは、THAADに使われているXバンド・レーダーより探知距離が多少短いといわれている。しかし、弾道ミサイルと共に敵航空機の探知・追跡も可能だ。形は正方形で、最大150度の範囲で旋回が可能になっており、広い面積をカバーする。実戦配備時には航空機数百機、弾道弾数十基を同時に追跡できるという。

 L-SAMはレーダーが弾道ミサイルを探知したら要撃弾を発射し、敵ミサイルを直接打撃するという形で運用される。要撃弾は2段式の、推進体と直撃飛行体(kill vehicle)から成っている。直撃飛行体が敵弾道ミサイルを直接打撃する役割を果たす。直撃飛行体を活用した弾道ミサイル迎撃技術は、米国とイスラエルに続いて韓国が3番目に確保した、と韓国軍の情報消息筋は伝えた。THAADも直撃飛行体を活用する。

 国防安保フォーラムの辛宗祐(シン・ジョンウ)専門研究委員は「慶尚北道星州にあるTHAADは大邱・釜山などの軍事施設を防御するのが目的で、L-SAMが戦力化されれば、韓国軍が必要とする追加の地域にミサイル防御能力を提供できる」とし「低高度だけでなく中高度まで韓国産ミサイル防御システムを適用できるようになり、ミサイル防御システムがより効果的に進化したとみることができる」と語った。

 韓国政府の関係者は「現時点では『韓国型THAAD』という別名に多少足りないところがあるが、今後性能を改良してTHAAD水準に要撃能力を強化するのが目標」と語った。

 今回開発されたL-SAMは「K防衛産業」にとって新たな有望株になるだろう、という評価もある。業界関係者は「ウクライナ戦争やイスラエル・パレスチナ戦争などでミサイル迎撃システムに対する需要が高まっている」とし「韓国型パトリオットと呼ばれる天弓IIに対する各国のラブコールが続いているが、L-SAMは天弓IIに続き、K防衛産業にとって次の売れ筋商品になり得る」と語った。先に韓国国防部(省に相当)は今年2月、およそ32億ドル(現在のレートで約5030億円)規模の天弓IIをサウジアラビアに輸出する契約が成立したと発表した。その後も天弓IIに対して購入の意向を明らかにした国は多数あるといわれている。L-SAMで中高度のミサイル防御システムが確保されただけに、輸出の見通しも明るいのだ。

ヤン・ジホ記者

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