社説
韓国各地で行き詰まる送電線建設、深刻な国家的課題だ【6月4日付社説】
人工知能(AI)は大量の電力を消費する。ところが韓国で、電力を送る送配電網の建設に深刻な支障が生じている。数年にわたって遅延するのが常だ。6月に竣工予定の「345キロボルト北唐津-新温井送電線路」の場合、当初は2003年に事業を開始して12年の竣工が目標だったが、地域住民や環境団体の反対、自治体の訴訟などで竣工が11年5カ月も遅れた。松島バイオクラスターに電力を供給する「345キロボルト新始興-新松島送電線路」は59カ月、南海海上風力発電の電気を運ぶ「345キロボルト新長城変電所」は62カ月も遅延した。
765キロボルト送電線の設置を巡って住民と韓電が対立した2008年の「密陽送電塔問題」以降、環境団体および住民の反対、地方自治体の非協力などで電力網建設は難航している。実際、密陽送電塔を含む新古里-北慶南送電線路が完工した14年までは、毎年100キロ以上も送電線路が完工していたのに、翌年からは2桁台に急落した。昨年完工した地上送電線路の長さは短距離中心で60キロに過ぎない。その余波は既に現実化している。京畿道驪州市の1000メガワット級驪州複合火力発電所は、稼働率は30%の水準にとどまる。
こんなことでは、先端産業に大規模投資をしても、電力供給が行われず工場を動かせないという状況が起きかねない。622兆ウォン(約71兆円)を投資して京畿道平沢・華城・竜仁・利川などに世界最大規模の半導体クラスターを造成する予定だが、2050年までにこのクラスターに追加される電力需要だけでも、現在の韓国首都圏における電力需要の4分の1に相当する10ギガワットに達する。当面は液化天然ガス(LNG)発電所を建てて初期の電力需要を充足し、36年までに大量の電気を供給する送配電網を竣工させる計画だが、今の状況では実現不可能だ。
電力網建設をスピードアップする「国家基幹電力網拡充特別法」が発議されたが、与野党の政争に巻き込まれて法案は破棄された。竜仁半導体クラスターなど先端産業団地が電力をきちんと供給してもらえないという災厄を防ぐには、同法の制定をこれ以上遅らせることはできない。与野党の政争事案でもない。第22代国会で与野党は、最優先で電力網拡充特別法から制定すべきだ。