▲2016年の北朝鮮による4回目の核実験に対抗するため、韓国が北朝鮮へ向け拡声器による宣伝放送を全面再開した時の様子。写真=news 1

 韓国政府は2日、北朝鮮の「風船による汚物の大量散布」への対抗措置として、2018年以降中止していた拡声器による北朝鮮向け宣伝放送をいつでも再開できるよう準備する作業に着手した。これと共に、北朝鮮向け拡声器の撤去・中止根拠である2018年4月27日の板門店宣言と同年9月19日の南北軍事分野合意書の無効化を推進するとも伝えられた。すると、この1週間で約1000個の汚物風船を飛ばした北朝鮮は同日夜、国防省談話で「どれほど気持ちが悪く、多くの労力が消費されるか十分に体験させた。(風船散布を)暫定的に中止する」と発表した。

 韓国政府は同日、緊急国家安全保障会議(NSC)常任委員会を開き、北朝鮮の姿勢に注視しつつ、撤去された拡声器をあらためて配置し、北朝鮮が再び挑発行為を強行した場合は直ちに北朝鮮向けの宣伝放送を行う方針を決めたという。早ければ3日から西部戦線を皮切りに、北朝鮮向けの拡声器の設置作業が行われる見通しだ。

 韓国政府が南北合意の無効化を推進しているのも、拡声器を使った北朝鮮向けの宣伝放送再開の障害をなくすためだ。北朝鮮向け拡声器は文在寅(ムン・ジェイン)政権時代の2018年4月27日板門店宣言により撤去され、同年9月19日の南北軍事分野合意書にも関連の内容が盛り込まれている。韓国政府は4日の国務会議(閣議)で、南北軍事分野合意書の無効化を公にする可能性があると伝えられた。韓国政府関係者は「南北軍事分野合意書のうち、『敵対行為の全面中止』など一部条項を無効にするのか、それとも全体を無効にするのかは、議論が続けられるだろう」と話した。

 張虎鎮(チャン・ホジン)韓国国家安保室長は同日のブリーフィングで、北朝鮮の相次ぐ挑発行為に対応し、「北朝鮮が耐え難い措置に着手することにした。風船による汚物散布と衛星利用測位システム(GPS)かく乱行為は、正常な国家としては想像すらできない低劣な挑発行為だ」と述べた。

 北朝鮮は先月28日から29日にかけて韓国に向けて汚物風船約260個を飛ばしたのに続き、今月1日から2日にかけても約720個を飛ばした。一部地域では車が破損するなどの被害も続出している。北朝鮮は五日間にわたり西北島しょ地域の航空機・船舶を対象にGPSかく乱攻撃も続けている。

 韓国政府は当初、汚物風船など北朝鮮による強度の低い挑発行為に対応しない方針だった。だが、北朝鮮の挑発行為の強度が高まり、民間に被害が発生したため、強硬に対応する方向へ姿勢を変えた。これと関連して、韓国政府と与党は同日、政府高官・与党間協議会を開き、「北朝鮮の汚物風船とGPSかく乱を強く糾弾する」と述べた。申源湜(シン・ウォンシク)国防部(省に相当)長官とロイド・オースティン米国防長官は、訪問先のシンガポールで行われた第21回アジア安全保障会議(シャングリラ会合)で、北朝鮮の風船による汚物散布が韓国戦争(朝鮮戦争)の休戦協定違反に当たることを確認した。

梁昇植(ヤン・スンシク)記者

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