中国がこれほど執拗(しつよう)だとは、米国は思っていなかった。2000年3月、クリントン大統領は演説で「中国政府は自国民のインターネット使用を検閲すると言った。幸運を祈る」と皮肉った。荒唐無稽(むけい)だと言わんばかりに聴衆は笑い出した。その直後、同大統領は米政界で長らく語られることになる発言をする。

 「まるでゼリーを壁にクギで刺すようなものではないか」。急速に膨らむインターネットを取り締まるのは当初から不可能だという意味だった。確信に満ちた表情で、「中国のインターネットアドレス数は900万件だ。電話モデムを通じて(中国で)自由が広がるだろう」と言った。現在、中国のインターネットアドレス数は3900億件だ。24年間で4万2000倍に増えた。モデムは光ケーブルに切り替わった。しかし、中国の独裁体制を変化させることには成功していない。

 民主党所属・共和所属を問わず、米国の指導者たちはインターネット技術が発展すれば中国の内部システムも共に改革が進むと信じていた。ジョージ・W・ブッシュ大統領は2002年、「中国はインターネット情報の流れを規制できないだろう」と言った。7年後のオバマ大統領も中国を訪れ、インターネットを通じた「改革」「開放」を語った。だが、米国が20年間楽観していた間に中国は密かに逆の道へ進んでいった。

 1990年代半ばから中国は全国民を「常時監視」するという目標を履行していた。自国民のあらゆるオンライン情報を収集し、海外サイトへのアクセスを遮断した。これを通じて個人のEメール、携帯電話メール、ウェブページ・アクセス記録までリアルタイム監視が可能な水準にまで達した。中国は今、その目を外に向けている。他国の国民の情報を盗み見し、他国の世論も操る考えだ。

 遅ればせながら米国は「二度と誤った判断はしない」と意気込んでいる。米議会が先月、中国のショート動画アプリ「TikTok(ティックトック)」の米国事業を強制売却させる法律を通過させた背景には、このような誓いがあった。TikTokは米国人の個人情報を中国に流出させているとの疑いを受けてきた。イスラエルとハマスの武力衝突発生直後、TikTokでイスラエルを一方的に批判する動画が過度に広がったことから、反西欧イデオロギーを広める中国の「宣伝道具」という大衆の認識も拡散している。

 米議会の次のターゲットは中国eコマース企業の通販サイト「AliExpress(アリエクスプレス)」「Temu(テムまたはティームー)」「SHEIN(シーイン)」になる可能性が高いという。中国当局がこれら通販サイトを通じ、米国人のデータを無差別に確保しようとする動きが随所でとらえられている。米国人3億4000万人の情報をもとに世論を監視し、中国の政治・社会への影響力を拡大しようという意図だ。低価格攻勢により流通秩序が破壊され、有害商品を送り込まれるよりも、「情報従属」のほうがもっと危険な時期になっている、と米国ではみている。

 韓国政府もこのほど、「中国通販サイトの攻勢に対応する」として対策を発表したが、逆風を受けて撤回した。中国の大手通販プラットフォームへの対策が一次元的な「海外通販サイトでの購入禁止令」であっては困る。韓国国民の敏感な情報が中国の手の内に入ってしまうシステムを根本的に阻止しなければならない。韓国は米国のように失敗する余力もない。

ワシントン=イ・ミンソク特派員

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