コラム
「バーニングサン警察総長」ユン・ギュグン総警の復帰は残念だ【コラム】
2018年から2019年にかけて芸能界や政財界を巻き込んだ「バーニングサン事件」の当時、「警察総長」という隠語で呼ばれたユン・ギュグン総警(55、日本の警視正に相当)がソウル松坡警察署の犯罪予防対応課長として、今年2月から勤務している。ユン総警は事件当時、ナイトクラブ「バーニングサン」に対する警察の捜査をもみ消した疑惑が持たれた。ユン総警は人気グループ「BIGBANG」の元メンバー、V.I(スンリ、イ・スンヒョン)などが経営していた飲食店に警察の取り締まり内容を事前に漏らしたとして、職権乱用権利行使妨害の罪に問われたほか、インク業者の経営者が告訴された事件をもみ消す見返りとして、株式を受け取ったあっせん収賄の罪で2019年に起訴された。
ユン総警は問題の経営者から得たインサイダー情報で株式を取引した資本市場法違反の罪のほか、同経営者に携帯電話のメッセージを削除させた証拠隠滅教唆の罪にも問われた。2021年5月、ソウル高裁は証拠隠滅教唆などの罪について一部有罪とする判決を下した。そして、大法院で同年、罰金2000万ウォン(約230万円)が確定した。現行法上、警察公務員は禁錮以上の刑が確定した場合に退職となるので、ユン総警は職を維持することができた。
ユン総警は2012年、親文在寅(ムン・ジェイン)傾向の病院長が1400億ウォンの融資を受ける過程で金融機関による不当な優遇を受けた事件に関与した疑惑も持たれた。「曺国(チョ・グク)ファンド」「ライムファンド事件」などでもユン総警の名前が挙がった。ユン総警は2017年7月、警察病院総務課長として在職中、当時の女性職員にカラオケ店での会合に来るよう強要するなど「パワハラ」疑惑で告発された。しかし、警察庁は最近「パワハラ事件」を嫌疑なしで終結させた。「お手盛り捜査ではないか」と論議を呼ぶと、ソウル警察庁捜査審議委員会が事件を審議したが、その結果は明らかにしていない。警察周辺からは「警察が時間を稼ぎながら、身内をかばっている」との指摘が出ている。
犯罪予防対応課は昨年末、凶器による騒乱などの犯罪に対応するため、一線警察署に新設された。尹熙根(ユン・ヒグン)警察庁長は同課を通じ、犯罪予防政策を総合的に樹立し、地域の犯罪に迅速に対応する「ホットライン」を構築すると説明した。人口約65万人が住むソウル市松坡区の犯罪を予防する警察幹部に前科があるユン総警が適任と判断したことになる。
最近ユーチューブに公開された「バーニングサンドキュメンタリー」は数百万回の再生回数を記録している。元歌手V.Iが「警察総長」と呼ぶほどの実力者だったというユン総警がさまざまな容疑をすり抜け、罰金刑止まりの刑罰で終わり、再び警察に復帰したことを巡っては、「不正警察」「有罪でも良い暮らしをしているな」「こんな人物がまだ警察だなんて」 「この国はもうだめだ」といった反応が出ている。「不正警察」が大法院で有罪判決が出ても警察公務員の身分を維持しているだけでなく、犯罪予防対応の責任者になるという現実。本当に我々は今、よほどの犯罪を犯しても何の問題にもならない国に住んでいるのだろうか。
パク・ヘヨン記者