社説
武器工場となった平和自動車、韓国の善意に対する北朝鮮の答えはいつもこうだ【5月18日付社説】
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記が先日視察した武器工場はかつて南北経済協力事業で建設された平和自動車の工場だったという。米国の北朝鮮専門家がこの点を指摘し、その後もこれを裏付ける証拠が次々と出ている。韓国政府も同様の見方をしているという。
平和自動車は統一教会が南北合弁の形で北朝鮮の南浦に設立した会社だ。2007年に訪朝した故・盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領も視察に訪れたが、統一教会は2012年に完全に手を引いたという。現在この工場では新型の240ミリ放射砲を発射する車両が製造されている。北朝鮮が「ソウルを火の海にする」と脅迫した際に言及した武器だ。その武器が韓国の資金で建設された工場で製造されているのだ。
過去にはさまざまな理由で非常に多くの南北交流・協力事業が行われた。南北間でさまざまな形の会談が行われ、ありとあらゆる合意書が取り交わされたが、その中で今も有効なものは一つもなく、全て北朝鮮に難癖をつけられ合意は破棄された。例えば1990年代に大宇が投資した南浦工業団地の工場や建物は全て没収され、金剛山や開城工業団地からも韓国企業は追い出され韓国の資産は強奪された。韓国政府が開城に建設した南北共同連絡事務所は爆破された。今年に入ると金正恩総書記は「同族ではない」「統一は不可能」と宣言した。現在南北の交通ルートには地雷が埋められている。
「北朝鮮に善意を施せば核開発を放棄し、改革・開放に乗り出すはずだ」とする仮説、すなわちかつての「太陽政策」「融和政策」の前提となった仮説自体がそもそもあまりに純真な発想だった。国の安全保障政策や統一戦略をイソップ物語から見いだすこと自体が「語不成説(全く理屈に合わない)」だったのだ。これらを考えた人間たちは北朝鮮に対する妄想にとらわれ、ただ与えることばかりに没頭した。前政権は最初から存在もしない金正恩総書記の「非核化の意志」を自ら宣伝し、全世界を欺いた。その結果が米本土を攻撃するICBM(大陸間弾道ミサイル)や韓国を実際に攻撃できる戦術核兵器の完成だった。
文在寅(ムン・ジェイン)前大統領は昨日回顧録を出版したが、その中で「金正恩総書記は『核を使用する考えはない』『娘の世代にまで核を頭に乗せて生きていきたくない』と述べた」と伝えている。善意を十分に示せなかったため、金正恩総書記の「非核化の意志」を貫徹させられなかった点が残念だと言いたいのだろうか。しかし南北の首脳がこんなやり取りをしていた時も、北朝鮮はミサイル開発に拍車をかけていた。対北朝鮮政策は北朝鮮の実態とその意図を冷静に把握することから始めねばならない。