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尹大統領 R&Dの予備調査廃止指示=緊縮姿勢から一転
【ソウル聯合ニュース】韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は17日、政府世宗庁舎で開かれた国家財政戦略会議で、成長の土台である研究開発(R&D)の予備妥当性調査を全面的に廃止し、投資規模を大幅に拡充するよう指示した。
予備妥当性調査は多額の予算が投じられる事業の政策的・経済的な妥当性を事前に詳しく検証・評価する制度。政府が一定以上の規模の財源を投じて事業を進めるためには同調査を受けなければならないが、これには通常数カ月を要するため、科学技術分野の関係者などは、早い技術変化に合わせ、R&Dの予備妥当性調査を緩和する必要があると指摘していた。これまで同調査の緩和や部分免除は政府レベルで検討されたことがあったが、全面廃止を進めるとする尹大統領の指示は極めて積極的なものと評価される。
また政府は今年削減したR&D予算を来年、過去最高レベルに増やすという方針も改めて確認した。R&D予算の削減を巡っては研究現場などから不満の声が上がったが、方針を一転させた。
尹大統領は、経済が急速に成長してこそ国民が体感する自由と福祉の水準も画期的に高まるとし、成長した企業の利益が国民にまんべんなく回るよう税制の整備や規制廃止に力を注ぐ一方、公正な労働市場づくりのため一層努力しなければならないと強調した。
特に尹大統領は「国の存立と直結する少子化の克服に全力を尽くさなければならない」とし、「実質的な出産率向上のために財政の構造を全面的に再検討し、伝達体系と執行方式を改善しなければならない」と指示した。
少子化対策には2006年以降、計370兆ウォン(約42兆円)の予算が投じられたにもかかわらず、明確な成果が得られなかった。尹大統領はその背景に官庁の縦割りによる予算の重複や浪費があると指摘したものとみられる。
尹大統領は、財政健全化の必要性についても改めて言及。「政府がすべきことは山ほどあるが、財源は限られており、思う存分使うのは難しいのが現実」とし、「財政に目を向けると借金ばかりたくさん受け継いだ少年家長のようにもどかしい気持ちになる時がある」と述べた。
また格付け大手のフィッチ・レーティングスが韓国の財政健全化の努力が総選挙後に弱まると予想したことに触れ、「今後、さらに倹約しなければならない」と強調した。
これは文在寅(ムン・ジェイン)前政権下で国家債務が大幅に増加したことを遠まわしに批判する一方、野党が主張する国民への給付金支給など大規模な事業について改めて否定的な立場を示したものとみられる。
ただ尹大統領は「私が強調する健全財政は無条件に支出を減らそうという意味ではない」とし「非効率的な部分は果敢に減らし、必要なところにはきちんと使って財政支出の効率性を高めようということ」と説明した。