日本政府がLINEヤフーにネイバー側の持ち株売却を要求するのは、日本で「LINE」が単に文字によるメッセージをやりとりするメッセンジャーではなく、ショッピング、金融、娯楽などを網羅する重要な生活プラットフォームとして位置づけられているためだ。LINEは2011年当時、ネイバーの日本子会社「NHNジャパン」が開発したメッセンジャーで、2011年3月の東日本巨大地震による基地局故障で通信が途絶したことを受け、当時の李海珍(イ・ヘジン)ネイバー理事会(取締役会)議長が災害時でも連絡を取り合えるようにと開発を指示した。

 単純にメッセージをやりとりするメッセンジャーから出発したLINEには、映像通話や絵文字、ゲームなどの機能が追加され、サービス開始から2年で4000万人近いユーザーを集めた。10年前から日本国内の「生活インフラ」として定着したのだ。現在LINEは日本国民10人中8人が使用し、「国民的メッセンジャー」として位置づけられている。日本人はLINEで友人にメッセージを送り、コンビニで商品代金を決済するかと思えば、公共料金を納めたり、ニュースを読んだり、ショッピングを楽しんだり、非対面診療を受けたりと、日常生活に関係するサービスを利用する。実際に2016年の熊本地震の際には、日本人は救助を要請し、生存を確認する「ホットライン」としてLINEを活用した。日本国内で「日本人の生活の中心に位置するプラットフォームは日本企業が運営すべきだ」という声が出てくるのはそのためだ。

■日本の社会インフラとなった「LINE」 

 LINEの強みは日常生活に必要なメッセンジャー機能を基盤として、多彩なサービスを利用できる「スーパーアプリ」である点だ。代表的なサービスとして「LINEニュース」がある。サービス初期にはニュースを自主編集し、要点だけを伝えていたが、リアルタイムでアップデートされるニュースコンテンツの長所を生かし、テーマ別にニュースを集め、関連ニュースを短い映像で配信することで約7700万人のユーザーを集めた。現在日本国内のモバイルニュースサービスでトップだ。 

 ネイバーのウェブトゥーン(ウェブコミック)は「LINEマンガ」という名称で、LINEを通じて配信されている。 現在1000万人以上のユーザーがLINEマンガでウェブコミックを楽しむ。日本で「ウェブコミックブーム」を巻き起こす上でLINEの役割は大きかった。

 LINEは日本で決済や送金などが統合された「金融ハブ」の役割を果たす。日本では全国に現金自動預払機(ATM)が20万台もあるほど現金決済が好まれる。日本政府は2020年の東京五輪を控え、決済の利便性を高めるため、「デジタル金融」への転換を急ぎ、簡易決済サービスが成長する契機となった。LINEの簡易決済サービス「LINEペイ」は2014年にサービスを開始した後、急成長した。現在はコンビニなどでの決済、オンラインショッピング、送金はもちろん、公共料金の納付にも使われる。LINEペイはソフトバンク系の「ペイペイ」、楽天グループの「楽天ペイ」と共に代表的な決済アプリとして定着した。

 LINEはLINEペイを活用し、電子商取引(EC)の「LINEショッピング」を拡大している。LINEショッピングは出店業者がLINE経由で商品を売買できるようにするプラットフォームで、4700万人以上の月間ユーザーを確保している。メッセンジャーサービスの特性上、接続回数が多いだけでなく、検索やショッピングを連携し、相乗効果を上げやすいからだ。LINEは映像で商品を推薦するライブコマースとメッセンジャーの友人に商品を送ることができるプレゼントなど関連サービスを追加し、ビジネス生態系を拡張している。

 LINEの課題はユーザーがプラットフォーム上にさらに長時間留まり、メッセンジャー、ショッピング、決済などを利用するように、従来のサービスを高度化しながら、新しいコンテンツを提供することだ。そのため、LINEは短い映像(ショートフォーム)プラットフォームである「LINE VOOM(ブーム)」の提供を開始した。他のユーザーがアップロードしたが動画を推薦、シェアすることができ、アクセス数に応じて収益を受け取れる。それ以外にも非対面診療サービス「LINEドクター」、音楽ストリーミングサービス「LINEミュージック」、コンビニや飲食店などで利用できる「LINEクーポン」などにサービス分野を拡大している。

■ネイバーの技術がベース

 LINEのサービスはLINEが独自に開発したものだが、一部にはネイバーの技術が採用されている。例えば、簡易決済とメンバーシップなどを集約したフィンテック総合サービス「LINEウォレット」にはネイバーのアルゴリズム技術が使われている。ユーザーの行動パターンと特性を分析し、グループ化した後、LINEのSNSデータを加味し、推薦アルゴリズムの正確性を高める。

 LINEショッピングにはネイバーのAI商品推薦システム「AiTEMS」が適用された。スマートフォンのカメラで納付書を撮影し、公共料金を支払うLINEペイの機能は、ネイバーが高度な光学文字認識(OCR)技術に基づき開発した。このため、株式売却でLINEに対するネイバーの影響力が低下しても、当面LINEヤフーはネイバーの技術に依存せざるを得ないと分析されている。日本国立情報学研究所の佐藤一郎教授は最近、朝日新聞に対し、「LINEヤフーは技術革新を推進したが、ネイバーとの技術力の差がまだ大きい。1年、2年では埋められない水準だ」と話した。

ファン・ギュラク記者

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