▲イラスト=UTOIMAGE

 4月30日、日本の神奈川県内であるホテルから出てきた20代の若い男性が警戒に当たっていた警察官に身柄を拘束された。在日韓国人の姜光紀(カン・グァンギ)容疑者(20)だ。姜容疑者は同月16日、栃木県那須町で燃えた乗用車の中から死亡した状態で発見された50代夫婦の遺体を損壊した容疑で警察の追跡を受けていた。日本での報道によると、姜容疑者は神奈川県出身の特別永住者で、幼い頃から少年野球チームに所属し、投打で注目される選手だったという。知人らは姜容疑者について「男らしくてリーダーシップもあり、羨望(せんぼう)の対象だった」と語る。死亡した夫婦とは全く面識がなかったようだ。姜容疑者はどういういきさつで全く知らない日本人夫婦の死亡事件に関与するようになったのだろうか。

 現地メディアは姜容疑者について「成人になってからもまともな仕事につくことなく、酒に溺れる中で遊興費などを稼ぐため『犯罪代行』に手を染めたのではないか」と伝えている。このように金に困った人間が高額の報酬に目がくらみ、犯罪行為に走るケースを日本では「闇バイト」と呼んでいる。求人は主にSNS(交流サイト)上で行われ、1件当たりの報酬は100万円前後、警察によると昨年だけで約100人が闇バイトに加担したとして逮捕されているが、そのほとんどが20歳前後の若者だった。あるアンケート調査によると、日本では大学生の6人に1人が闇バイトの誘いを受けた経験があるという。

 韓国でも闇バイト問題は決して人ごとではない。昨年12月にはソウル市中心部の景福宮の塀でスプレーを使った落書きが見つかった。犯人は10代の未成年者だった。犯人は警察の取り調べで「景福宮などに不法動画共有サイトを宣伝する落書きを書けば300万ウォン(約34万円)を払うと言われた」と供述したという。破損した景福宮の塀の復旧には1億ウォン(約1100万円)以上の費用がかかった。

 ある日本メディアは日本での闇バイト問題や韓国の景福宮で起こった落書き事件などを関連付け「金のためなら文化財の破損や他人に危害を加えることもいとわない安易な思考が(韓日の)若者に広がっている」「善悪の判断力はもちろん、基本的な常識を学ぶ機会を社会が彼らから奪っていないか考えるきっかけにすべきだ」と指摘している。同じような問題が相次いだことを受け、日本政府は先日緊急対策を取りまとめ、学校で闇バイトなどの犯罪を未然に防止する授業やキャンペーンなどを高校生や大学生を対象に行おうとしている。警察も人工知能(AI)を使って闇バイトの雇い人摘発に乗り出している。

 韓国でも若年失業率が長期にわたり高止まりし、庶民の生活も苦しい状態が続いているため、「闇バイト」を通じた犯罪が今後広がらないとは断言できない。そうなれば人生をたちまち棒に振る「悪魔の誘惑」を受けた若者は今後も増えていくだろう。若いという理由で処罰を軽くすべきではないが、まずは彼らに法を守るという考えや犯罪に手を染めることへの恐怖心を教えねばならない。これは大人の役割だ。このまま手をこまねいていては景福宮での落書きよりもさらに凶悪な犯罪の芽が、まさに時限爆弾のように私たちの周囲に広がり始めるかもしれない。

金東炫(キム・ドンヒョン)記者

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