コラム
米国の反イスラエルのデモ隊が掲げる「白頭から漢拏まで」のプラカード…一体なぜ?【コラム】
最近、米国の大学街で野火のように広がる反イスラエルのデモに関連して、ニューヨークのコロンビア大学やハーバード大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)の現場を取材して記事として伝えたところ、読者の方が「衝撃的」だとしてある動画を送ってきた。4月29日に米国の名門プリンストン大学で撮影されたものだという動画には、「学生デモ隊が北朝鮮を称賛する段階に至った」という説明と共に、韓国系とみられるある男性が「北朝鮮とパレスチナの連帯を強調したい」と演説する様子が収められていた。読者は「どうして李承晩(イ・スンマン)大統領の母校で、従北勢力が手放しで北朝鮮を称賛し、デモ隊がこれに歓呼しているのか」と嘆いた。
だがこれは、たまたま起きたことでもなさそうだ。ニューヨーク大学でも5月5日に似たようなことがあった。ある東洋系の女性が「北朝鮮とパレスチナの間には暴力と抑圧という共通した歴史がある」と称して、北朝鮮とパレスチナは米国とイスラエルに共同で対応すべきだという趣旨の主張を行った。動画が拡散されると、ネットユーザーらは「そんなに良ければ北朝鮮へ行け」と批判した。
4月28日、コネティカット州にあるイェール大学キャンパスの反イスラエル・デモの現場に行ったとき、記者も類似の経験をした。キャンパスの一角に立てかけてあるプラカードが目に入ったが、そこにはハングルで「白頭から漢拏まで、川から海まで、解放のために!」とハングルで書いてあった。「川から海まで」とは、パレスチナ支持勢力が使うフレーズだ。今回の反イスラエル・デモにおいても使われていた。だが「白頭から漢拏まで」という言葉は、反イスラエルのデモ隊で一般的に使われるものではない。どういう勢力が両者をくっ付けたのか、推測するのは難しくなかった。
今回の反イスラエル・デモは、昨年10月に武装勢力ハマスがイスラエルを攻撃したことで触発された。ある日突然、人々が泣き叫びながら人質に取られ、憤怒したイスラエルはハマスが事実上支配しているガザ地区をじゅうたん爆撃した。この過程でパレスチナ人3万4000人が死亡するなど、民間人に深刻な被害が発生し、今では国際社会も「過剰な報復」だとしてイスラエルに背を向けつつある。反イスラエルのデモは、こうした過程で、学生たちが黙過せず抵抗に乗り出したというのが本質だ。パレスチナの歴史やデモの展開過程をじっくり考えてみると、従北勢力でなければ「パレスチナと北朝鮮は同じ境遇」という主張に同意はできない。
韓国はここ数年、反共と言うと「古臭い人間」として目を付けられる国へと変わった。文在寅(ムン・ジェイン)政権時代に国家情報院(韓国の情報機関)の対共捜査権を大した対策もないまま警察に移してしまうほどだ。だが、少し視線を変えてみると、韓国人の考えとは全く異なることが世界の各所で起きているのが現実だ。世界的に注目される大学デモで韓国系と推定される東洋人が、はばかることなく北朝鮮を擁護し、賞賛している。分断国家の韓国は、この全てを受け止める準備ができているのか。
ニューヨーク=尹柱憲(ユン・ジュホン)特派員