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<尹政権発足2年>民主主義の「価値外交」加速 北朝鮮・中ロの接近は課題
【ソウル聯合ニュース】2022年5月に発足した韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の1年目が前政権の「戦略的あいまい性」から「戦略的明確性」への転換を図った時期だったとすれば、2年目はその結果が出始めた時期といえる。自由民主主義の価値を共有する米国・日本との関係はこれまで以上に強固になった。
昨年7月、米国と核問題を話し合う「核協議グループ(NCG)」を発足させ、日本とは両国の首脳が相互に往来する「シャトル外交」を再開させた。韓米日3カ国の連携は米大統領山荘のキャンプデービッドで首脳会談を開くなど、「準同盟」との評価が出るほど強化された。
自由民主主義を重視する国との連携強化を目指す尹政権の「価値外交」について、外交・安全保障専門家らは「正しい方向設定」との見方を示している。西江大国際大学院の金載千(キム・ジェチョン)教授は「自由主義の秩序の下で飛躍的な成長を成し遂げた韓国が既存の秩序を守ることは価値の問題だけでなく、核心的な国益の問題」として、「外交、安全保障、(北朝鮮との)統一政策の方向は正しいということに多くの人が同意していると思う」と述べた。
ただ、米国や日本との連携を強化したことへの反作用で中国やロシアとはぎくしゃくとした関係が続いている。北朝鮮と分断されているなか、米国、日本、中国、ロシアの4大国に囲まれている朝鮮半島の地政学的な宿命でもある。
北朝鮮はウクライナを侵攻しているロシアに武器を供給するなど新冷戦に便乗し韓国を「第1の敵対国」に位置付けるなど、挑発と威嚇を続けている。
◇価値外交の強化 韓米日3カ国協力が新たな段階に
発足から2年目に入った尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は価値外交を加速させた。昨年7月、ウクライナを電撃訪問したことがその象徴といえる。ポーランドを訪問していた尹大統領は少人数の関係者だけを同行させ、ウクライナの首都キーウを訪れ、ゼレンスキー大統領と会談した。尹大統領は戦時中の国を訪問した初めての韓国大統領となり、自由民主主義とルールに基づいた国際秩序を重視する姿勢を国際社会にアピールした。
キャンプデービッドで開催された韓米日首脳会談は3カ国の安全保障協力を新たな段階に引き上げた。3カ国首脳は有事の際に迅速に協議を行うことで合意した。加盟国は領土保全や政治的独立、または安全が脅かされていると認めたときはいつでも協議を行うと定められている北大西洋条約の第4条と類似している。一部からは3カ国関係が事実上の「準同盟」に引き上げられたとの見方も出た。ただ、同盟の根幹となる「相互防衛条約」は結んでおらず、軍事的な意味の同盟とは距離があるとの意見が多い。
一方、核協議グループの発足は尹政権の価値外交の主な成果に挙げられる。米国が他国と核問題を話し合う2国間の協議体を設置したのは事実上、核協議グループが唯一だ。
◇価値外交の反作用 中国・ロシアとの関係は課題に
新冷戦と言われる韓米日と北朝鮮・中国・ロシアの対立構図が鮮明になるなか、中国・ロシアとの関係改善は尹政権の課題として残っている。とりわけ、中国は韓国が中国けん制を狙う米国のインド太平洋戦略に歩調を合わせることに不満を隠さなかった。中国外務省は今年3月、南シナ海問題に懸念を表明した韓国に対し、「韓国は問題の当事者ではない」として、「南シナ海の平和・安定に資するものではなく、中韓関係の発展にはなおさら資するものではない」と批判した。同月、韓国が主催した「民主主義サミット」に台湾の閣僚級が映像メッセージで参加したことに関しても、中国外務省は「一つの中国」原則を守るよう求めた。
冷え込んだ韓中関係を改善するきっかけとして、今月末にソウルで開かれる見通しの韓中日首脳会談が注目される。梨花女子大の朴元坤(パク・ウォンゴン)教授は「社会主義国である中国の特性を考えれば最も高いレベルで意思疎通が行われてから次の段階に入れる」として、「結局、尹大統領と習近平国家主席の意思疎通が行われなければならない」と述べた。
ロシアとの関係はロシアがウクライナ侵攻に使う武器と弾薬を確保するため北朝鮮と接近したことで大きく悪化した。ウクライナ戦争が終わるまで対ロ関係は回復が困難との見解が大勢を占めている。朴氏は「期待水準を大きく下げ、最悪の状況だけは避ける管理が必要だ」としたうえで、「ただ、ウクライナ戦争が終われば関係が改善される可能性が高い」との見通しを示した。
◇韓国を「第1の敵対国」とした北朝鮮 行き詰まった南北関係
尹政権は発足2年目も北朝鮮の挑発には断固として対応しながら、対話の可能性は開いておくとの原則を堅持した。
だが、北朝鮮は韓国の対話要求に応じず、核とミサイルの高度化を進め、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)は韓国を「第1の敵対国、不変の主敵」とみなすよう憲法の改正を指示した。そのうえで、奇襲的な攻撃が可能な固体燃料式の中長距離弾道ミサイルや超音速ミサイル、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)などの発射実験を行い、挑発を続けた。
また、南北軍事合意の破棄を宣言し、南北軍事境界線を挟む非武装地帯(DMZ)にある監視所(GP)を復元したほか、黄海上の軍事境界線にあたる北方限界線(NLL)付近に配備している海岸砲の砲門を開放するなど意図的に緊張を高めた。
3回目の打ち上げで軍事偵察衛星を軌道に進入させることに成功。韓国軍も偵察衛星第1号機と第2号機を打ち上げるとともに、前線部隊の対応体制を強化し、北朝鮮の挑発行為を抑制することに注力している。
ただ、北朝鮮の変化を導き出すさまざまな外交策が必要との指摘もある。政府系シンクタンク・統一研究院の洪珉(ホン・ミン)先任研究委員は「尹政権は体制を整えば北が圧力を感じ、変化するという期待が大きいとみられる」とし、「体制だけでなく、多国間の解決策など積極性を見せる必要がある」と提言した。