▲イラスト=UTOIMAGE

 韓国農林畜産食品部(日本の省庁に相当)の調査結果によると、2023年現在、韓国国内でペットを飼っている人口の占める割合が28.2%に上ることが分かった。国民のほぼ3分の1がペットと生活していることを意味している。ペットを単なる物体ではなく生命体として認識する社会的雰囲気も徐々に拡散している。こうした認識の変化に伴い、法務部は「動物は物ではない」という条項を含む民法改正案を発議したものの、裁判所行政処(部署)の反対で議論は中断した。これは社会的認識と法的保護の間の乖離(かいり)を物語っている。

 動物保護法を何度も改正してきたが、動物に対する性的虐待などの犯罪はいまだに後を絶たない。2017年5月に京畿道富川市で発生した犬への性的虐待事件、18年9月に忠清南道天安市で発生した雌牛への性的虐待事件、19年5月に京畿道利川市で発生した犬への性的虐待事件などがこうしたケースだ。これらは裁判所で判決が下されたケースに過ぎず、明らかになっていない動物への性的虐待犯罪はさらに多いものと思われる。

 現行の法体系内では、動物を性的に虐待する行為に対して具体的に規定されておらず、法的な処罰は困難な状況だ。裁判所は「正当な理由なしに傷害を与える行為」を動物虐待と解釈しているが、性的虐待そのものが動物に物理的傷害を与えないケースが多く、法の盲点となっている。また、動物を虐待する場面を撮影してインターネットに掲載する行為を禁止する現行動物保護法の条項も、映像だけでは動物が身体的苦痛を受けているかどうかを判断しにくく、処罰がなされないケースが多いという点で、法の限界と言わざるを得ない。

 米国やドイツなどの主要国では、動物への性的虐待を犯罪と規定し、これに対する処罰を強化する法令を設けている。特に、米国連邦捜査局(FBI)は、2016年から動物への性的虐待を主要犯罪類型の一つとして盛り込み、管理しているほか、ドイツは12年に動物福祉法を改正して動物を利用した性行為を厳格に禁じている。

 また、オランダは欧州で最も動物福祉法が発展した国の一つで、「動物の権利」に焦点を合わせて各種の法的保護を提供している。オランダは動物を故意に虐待する行為に対して最大で3年の懲役、または重い罰金刑を科すほか、動物虐待事件を専門に扱う部署を警察傘下に設置している。英国は「動物福祉法」を通じて全ての動物の保護者に動物の「基本的な福祉要求」を充足させる法的義務を課している。同法は、動物の健康と福祉に必要な標準を定め、これに違反した場合、厳重な処罰を下すことを規定している。

 韓国の動物保護法も、こうした国際的な傾向に合わせて改正される必要性がある。現行法上、動物虐待の範囲が非常に狭く規定されており、「実質的な保護は困難」と指摘する声が聞かれている。これに対し「動物基本法」を新設して動物保護、および福祉の基準を明確にした上で、「動物への性的虐待」に対する明確な定義と処罰規定を盛り込むことが急務と言える。また、動物虐待に対する処罰を強化し、動物への虐待行為の具体的な範囲を明確に規定して法の死角地帯を最小化することが願われる。

 ペットは単なるペットではなく、人間と共存する生命体だ。法的保護を強化するだけではなく、動物が苦痛を受けずに生活が尊重されるよう、社会的で法的な装置づくりが急がれる。動物保護は単純に動物を保護することを超えて人間の道徳的、倫理的発展のための必要不可欠な措置であり、社会全体の成熟度を反映する重要な指標だ。

リュ・ウォンヨン(弁護士)

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