【写真】中央選挙管理委員会の朴賛鎮事務総長(右)と宋奉燮元事務次長/聯合ニュース

 韓国監査院が中央選挙管理委員会の不正採用に関する監査を実施した際、選管が関連資料を隠ぺいするなど、組織的かつさまざまな方法で監査を妨害したことが明らかになった。

 本紙の取材を総合すると、監査院は2022年の定期監査で中央選挙管理委員会に人事関連資料の提出を要求した。選管が適正な人員運用を行っているかどうかを調べるためだった。監査院が要求した資料には、選管の職員昇進審査資料も含まれた。昇進審査が規定と手続きに沿って行われているかを確認することが目的で、監査院が他の機関を監査する際にも通常チェックする項目だ。

 資料提出要求を受けた選管は、事前点検の過程で5級昇進審査業務に問題があったことを把握した。昇進対象になるにはさまざまな教育プログラムを履修し、「教育点数」を積まなければならないが、点数算定が間違っており、本来昇進対象に含まれてない人物が昇進した事例があったのだ。すると、選管は監査院に5級昇進関連資料の提出を拒否し、それ以外の職級の昇進審査資料だけを提出した。監査院が数回にわたって資料提出を促したが、選管は応じず、結局当時の監査では問題が指摘されなかった。

 選管によるこうした資料隠ぺいの事実は、監査院が昨年7月、選管幹部の子女の不正採用疑惑に関する監査に着手したことでようやく指摘された。監査院が選管職員の業務用パソコンを解析したところ、2022年の監査に備え、5級昇進審査資料を隠ぺいする方策を盛り込んだ内部報告書が発見されたのだ。A4で1枚の報告書には「教育点数を満たしていない人の昇進は法令に合致しない可能性もあるが、選管には裁量権がある」と主張する内容と共に、「監査院に対し、関連資料の提出を拒否すべきだ」と書かれていたという。監査院は問題の報告書が当時の中央選管の朴賛鎮(パク・チャンジン)事務総長と宋奉燮(ソン・ボンソプ)事務次長に報告されたことを把握した。

 これを受け、監査院は2人には監査を妨害した疑いがあるとする内容の捜査参考資料を4月29日に検察に送った。監査院関係者は「選管が資料提出要求の大半を拒否し、不正がさらに存在する可能性が疑われる」と話した。選管が資料を隠ぺいした2022年の監査でも、選管職員128人が請託禁止法に違反して金品を受け取り、選挙管理委員らが法令による根拠もなしに毎月200万ウォン(約22万4000円)の手当を受け取ってきた事実が摘発された。

 選管は今回の監査でも資料提出に協力しなかったという。監査院が選管職員の親族が優遇採用されたかを確認するため、各地の選管に経験者として採用された職員の人事記録カードを要求すると、地域の選管は職員の家族関係や顔写真などをペンで黒塗りした資料を提出した。

 朴賛鎮元事務総長の前任者である金世煥(キム・セファン)元事務総長が選管内で「世子(跡継ぎ)」と呼ばれた息子の人事不正に関連する証拠をもみ消した状況も判明した。金元事務総長は在職中に選管から携帯電話とノートパソコンを支給され使用していたが、2022年3月に退任した際、それを返却しなかった。監査院が最近、金元事務総長が無断で持ち出した携帯電話とノートパソコンを確保して確認したところ、全てのデータが消えていたという。監査院は金元事務総長について、いったん選管の物品を横領した容疑を適用し、検察に捜査参考資料を送った。

 朴元事務総長の娘を不正採用した疑いが持たれている全羅南道選管の職員らは、監査が迫ると、関連文書ファイルを変造して摘発された。「外部の面接委員から点数欄を空欄にした評価表を受け取れ」などという不正の手口が書かれた文書ファイルだった。全羅南道選管職員は問題のファイルを開いて別の内容を入力し、上書き保存する方式で隠ぺいを試みたが、監査院が別の業務用パソコンを解析し、元のファイルを捜し出したことで容疑が明らかになった。

 ソウル市選管のシン・ウヨン元常任委員の子女の不正採用に関与した疑いが持たれている同市選管職員も監査前に関連文書を破棄して摘発された。問題の職員は選管による自主監察では「面接委員らにシン元委員の子女の家族関係を削除した人事記録カードを提供した」と虚偽の陳述を行ったという。監査院関係者は「選管職員が子女の不正採用など重大な人事上の不正に対し、『慣行』だからと大したことではないという態度を取ったり、関連証拠を隠ぺいしたりするなど監査に強く抵抗した」と説明した。

金耿必(キム・ギョンピル)記者

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