▲1970年にフィールズ賞を受賞した広中平祐・元ハーバード大学数学科教授。2024年1月に東京原宿の自宅でインタビューに応じてくれた。/成好哲(ソン・ホチョル)東京支局長

 93歳の広中平祐・元ハーバード大学数学科教授が今年1月18日に東京原宿の自宅で取材に応じてくれた。広中氏は1970年に「特異点解消」という研究で「数学のノーベル賞」と呼ばれるフィールズ賞を受賞した。長く日本の数学界を率いてきた広中氏は韓国では、韓国人として初めてフィールズ賞を受賞したプリンストン大学のホ・ジュニ教授の師匠として有名だ。ホ・ジュニ教授は2008年にソウル大学にやって来た広中氏の講演を聴いて「数学者になろう」と決めたという。ホ・ジュニ教授の修士論文も広中氏の特異点解消を応用した内容だった。

 広中氏は「私のような高齢のオンボロにインタビューしても面白くないですよ」「最近は外出もあまりしません」と最初に語った。玄関でそんな言葉を聞いた時点ではその意味がよく分からなかった。インタビューを行った約100分間に広中氏は一つの言葉を繰り返したが、時には意味が通じないこともあった。天才数学者の聡明さと記憶力も93年という歳月の前ではどうしても衰えたようだ。

 長い録音記録を何度も再生したが、それは「日本で最高の天才数学者にとって最後のインタビューになるかもしれない」という責任感があったからだ。広中氏は「私との関係がホ・ジュニ教授のフィールズ賞受賞に影響したかどうかは分からない」「ただ私は若い彼に徹底して数学に没頭するよう促した」とした上で「ホ・ジュニ教授は最初は数学ではなく文学などに関心を示したが、数学も本当に良いものだと伝えて上げた」と説明した。

 広中氏は「数学は本当に面白い」という言葉を20回以上繰り返した。彼の途切れ途切れの話を要約するとこうだ。

 「元々高校の時は音楽が好きだったが、京都大学に入学してから数学の面白さを知った。当時の数学者たちは決められた方程式に従って、数字として数学の問題を解いていたが、それでは面白くなかった。計算式にこだわらず私の性格に合わせて解けばよい。魚の料理は刺し身でも煮ても魚の本質は変わらない。解く方法が違っても、魚が大きくなったり小さくなったりはしないから。決められた方程式にこだわらず、条件は何度変えてもよい。本質は変わらないから。あまりにも面白い。数式や数字ではなく文章として数学の問題を解くと言うべきだろうか。特異点の研究はそんなものだ。問題をいろんな側面から解いていくと、鋭く堅固で最も重要な部分が見えてくるが、それが特異点だ。それを解消した」

 広中氏の座右の銘は「素心深考」だ。その意味を質問したが「若い時にサインを求められた時よく書いた言葉」と笑いながら、また関係のない話を始めた。素心深考とは「素朴な心に戻って深く考える」という意味だ。20代の若者のような彼の笑顔を見ていると、「文系の高校で微積分を教えるべきですか」という事前に準備した質問はできなくなった。「数学の本当の面白さ」を子供たちから奪い、「数学放棄者」をたくさん生み出したのは今のこの社会かもしれない。

東京=成好哲(ソン・ホチョル)東京支局長

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