3月25日午前10時40分ごろ、研修医の集団離脱による医師の集団行動を受け中央災害安全対策本部は担当記者団にA4用紙3枚分の「報道参考資料」を送付してきた。クリニックなどを経営する救急医学の専門医らもこの日から大型病院の救急室や保健所で医療行為に当たれるという内容だった。医師1人が2カ所以上の医療機関で同時に診療を行うことは原則として不法行為だ。ただし公益のため必要な場合は管轄の地方自治体の長の承認を得て同時診療が可能になる例外条項もある。集団離脱した研修医が立ち去った空白を埋めるためだ。

 それから8日後の4月2日、記者に1本の電話がかかってきた。救急医学専門医の資格を持ち、現在慶尚道で町のクリニックを経営している医師だった。この医師によると、救急室に行って診察しようとしたところ拒否されたという。到底信じがたい話だった。そこでこの医師が韓国保健福祉部(省に相当)健康保険審査評価院に「1人の医師が勤務先以外の別の病院で診療できるか」と確認したところ、「2カ所以上の医療機関で同時に診療はできない」と言われたそうだ。韓国政府は「一時的に他病院の救急室での診療を認める」と発表したのだが、これを知らなかったようだ。保健所も「保健医療の災害危機『深刻』段階ではないので認められない」と言ってきた。この時は深刻段階に引き上げられてからすでに39日が経過していた。知り合いの別の救急医学専門医らも同じことを言われたという。医師らは「政府は発表をしただけで、現場の状況は何も知らない」と怒りをあらわにした。

 保健福祉部は4日「一部自治体と健康保険審査評価院の関係者が一連の対応について熟知しておらず、この状態で案内をしたのは遺憾」とコメントした。さらに保健福祉部は22日になって「自治体の長の承認なしにクリニックなどの医師は別病院の救急室で一時的に診療可能」と発表した。当初は「救急患者」に対応するための「緊急措置」と発表していたが、その問題点を補うため28日後になって発表したものだ。混乱が広がる間に全国では救急患者を含む合計5人が死亡したことがニュースなどで伝えられた。22日の政府の発表には一連の混乱に対する反省の言葉はなかった。自ら救急患者の対応に当たろうとしたが、拒否された医師らへの謝罪もなかった。

オ・ユジン記者

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