【写真】無所属の尹美香議員は昨年9月20日、ソウル高裁で行われた正義記憶連帯後援金横領事件の二審で懲役1年6月、執行猶予3年の判決を受け、コメントを発表した/ニュース1

 韓国では総選挙が終わったが、現職国会議員の任期が約1カ月残っている。あきらめの心情で、荒唐無稽な状況を見守らなければならない。当初から問題視されてきた尹美香(ユン・ミヒャン)議員も任期を全うすることになる。

 4年前、正義記憶連帯(旧韓国挺身隊問題対策協議会)の尹美香(ユン・ミヒャン)理事長が共に民主党の衛星政党である共に市民党から総選挙に出馬し、比例区で当選すると、長い間一緒に活動していた日本軍慰安婦被害者の李容洙(イ・ヨンス)さんが後援金横領疑惑、2015年12月の韓日慰安婦合意の情報事前入手などを暴露し、「国会議員になるべきではない」と発言した。不正疑惑に関する報道が相次いだ。世論調査では「国会議員就任を辞退すべきだ」という回答が70.4%に達したが、尹氏は疑惑を否定し国会議員になった。検察による捜査が始まると、かつて一緒に慰安婦被害者支援活動していた施設長が命を絶った。業務上横領など8件の容疑で起訴され、2年5カ月後の昨年2月、7件の容疑は無罪、1億35万ウォン(約1130万円)の横領容疑のうち、約1700万ウォンを有罪と認定する一審判決が出た。昨年9月の二審判決では、8000万ウォンの横領、補助金管理法違反なども有罪となり、懲役1年6月、執行猶予3年の判決を受けた。議員失職に相当する判決だが、尹氏は「無罪を立証する」として上告し、国会議員としての任期を満了することになった。

 韓日慰安婦合意の情報を尹氏が事前に知っていたという李容洙さんの指摘も事実であることが明らかになった。弁護士団体が訴訟を通じ、外交部から面談記録を受け取った。当時外交部が合意前日までに尹氏と計4回にわたって会い、合意内容を事前に共有したという文書まで存在した。

 堅く持ちこたえた「尹美香議員」の4年間の議員活動はどんなものだったか。間もなく任期が満了する第21代の国会議員は約2万5000件の法案を提出し、可決された割合は35%だった。国会のウェブサイトによると、尹議員が代表となって発議した法案は109件だが、可決されたのは2件で、16件は内容が一部反映された。慰安婦関連法案の中には、慰安婦被害者だけでなく関連団体に対する名誉毀損も禁止する内容の改正法案に共同発議者として名を連ねたが、「尹美香保護法」という論議が起き、法案が撤回された。

 尹議員は国家保安法の廃止、韓米軍事演習の中止などを一貫して主張してきた。2022年11月、北朝鮮が韓国領海にミサイルを発射するなど、約120発を撃ちまくった日、北朝鮮を糾弾するどころか韓米合同空中訓練の中断を要求した。昨年は外交部から車両の提供を受け、親北朝鮮団体である在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)が主催した関東大震災100周年行事に参加した。論議を呼ぶと、「色分け論」だと反発した。昨年11月には国会で在席議員260人のうち253人の賛成で、中国に脱北者強制送還中断を求める決議案が可決されたが、尹議員は棄権した7人のうち1人だ。

 今年初めには親北朝鮮傾向の人物を集めて国会討論会を開き、「尹錫悦政権の反北・滅北政策が我々には障害物だ」とあいさつした。その席上では「北朝鮮は完全自主国防で、教育・医療・住居は南側(韓国)は競争、北朝鮮は無償だ。親日清算も南側は完全に失敗、北側は成功した。どちらがまともに暮らしているのか」という発言も飛び出した。その発言の主は先の総選挙で当選した民主党の金俊爀(キム・ジュンヒョク)氏の「梨花女子大生米軍性上納」発言を擁護するため、「梨花女子大政治外交学科に通っていた人(1935年生まれ)が1948年ごろ、楽浪クラブで(梨花女子大の初代総長)金活蘭(キム・ファルラン)に捕まった」と荒唐無稽な主張を展開した女性活動家だ。そんな傾向の左派団体と人物を国会に集め、任期終盤まで活発に活動してきた。3月には「戦争を呼ぶ韓米合同軍事演習を直ちに中断せよ」という社会団体の合同記者会見、「旧時代の政治、色・理念、従北攻勢中断! 国家保安法廃止」を主張する記者会見、「敵対と色分け論を超え、主権と平和の第22代国会を要求」する記者会見を相次いで開いた。

 実際尹美香議員を巡る論争は複雑でもない問題だ。国内外で珍しくない市民団体の不透明な運営、教条主義に陥り聖域化した活動に対する問題提起だった。過ちを正し、組織と目標を立て直せばよい。2008年に死去した沈美子(シム・ミジャ)さんが生前に挺対協活動に問題提起を行ったことがあるが、あまり注目されなかった。尹氏が国会議員になろうとすると、一緒に活動してきた「身内」の李容洙さんが不正を暴露し、問題が一つ残らず露見したのだ。

 本人と組織運用の問題点が明らかになったわけだが、本を出して「過去の歴史の真実究明を追求する運動を抑圧する矢じりに私をはめ込んで攻撃することが彼らの本当の目的だろう」と主張した。1700万ウォンの横領が有罪となった一審については、「無罪、無罪、無罪で終わった魔女狩り」だと言い、量刑が増した二審判決については「たとえ有罪宣告でも、私は自ら依然として無罪だと考える」と述べた。

 改めて「尹美香問題」を振り返ったのは、国会任期満了を控えたタイミングで、日本のあるニュースに接したからだった。日本の中学校の校長はコンビニでレギュラーサイズのカップにラージサイズのコーヒーを注ぎ、1回当たり70円、計7回で490円の利益を得たことで、30年間勤めてきた教職を追放され、退職金も受け取れなくなった。警察は不起訴としたが、教育委員会は最も重い懲戒免職とした。法的判断よりも厳格な個人倫理、職業倫理が働く社会であることを示している。

 韓国はどうだろうか。そんな日本から謝罪を受け、歴史の正義を確立しようという市民団体の出身者が、自分の不正や過ちには寛大な恥知らずさに加え、問題が明らかになると、マスコミと検察による魔女狩りだと主張する。最低限の法的な正義さえ遅れ、4年間の国会議員任期に受け取った歳費を回収する仕組みもない。第22代国会でもこうした行動をどれだけ目にしなければならないのだろうか。

姜京希(カン・ギョンヒ)記者

ホーム TOP