▲サッカー韓国代表のソン・フンミン選手の父親でSONサッカーアカデミー監督のソン・ウンジョン氏。ソン・ウンジョン氏は17日午前、ソウル市中区のフランチェスコ教育会館で開催された本人のインタビュー集『私は読んで書いて捨てる』の出版会見に出席した。/聯合ニュース

 「誰にも見せたことはありません。息子のフンミンにも見せていません。誰かが見たとしても、悪筆(読むのが難しいほど下手な字)なのですぐ見なくなるでしょうから」

 SONサッカーアカデミー監督のソン・ウンジョン氏(62)が17日に出版記念会見に出席し、自分が書いた読書ノートについてこのように述べた。サッカー韓国代表のキャプテンを務めるソン・フンミン選手(32)=トットナム=の父親でもあるソン氏は先日出版された『私は読んで書いて捨てる』の主人公だ。出版社ナンダの代表を務める詩人のキム・ミンジョン氏がソン氏の読書ノートを見ながら、ソン氏と交わした対話を一問一答形式で書き下ろしたものだ。エッセー集『全ては基本から始まる』以来3年ぶりだ。

 ソン氏は読書家としても広く知られている。テレビはほとんど見ず、スマートフォンも電話機能以外は使わないという。そんなソン氏が唯一楽しんでいるのが本だ。ソン氏は「一冊の本をしっかりと理解するため2-3回は読み、読書ノートに要点を書きこんでいる」「悪書を除けば、私を成長させなかった本はないと思う」と語る。ソン氏は自らを「国卒(国民学校=小学校卒)と呼ぶ。実際は高校を卒業しているが、中学校以降は授業にはほとんど関心がなかったためだという。ソン氏は「枠にはめようとする学校の勉強は嫌だった。本を通じて知識ではなく世の中を生きる知恵を育てていった」と述べた。

 ソン氏の読書量は年間200-300冊ほど。「世の中がどのように回っているかを知るには書店に行かねばならない」と常日頃から語る。ソン氏は「楽してやりたいことを全てやりながら、それなのに忙しくて本が読めないというのは話にならない。時間さえつくればいつでも、どこでも本は読める」と強調した。

 その一方で2人の息子には読書を勧めることは特にしなかったという。ソン氏は「最高の老後の備えは一人前になった子供に文句を言わない親になろうと努力すること」「私は上の息子夫婦の家がどこにあるかも知らない。一人前の子供の生活は親とは完全に分離すべきと考えている」と語った。ただし寝ているソン・フンミン選手の枕元に重要な部分に線を引いた本を置いたことはあったという。

 これまで読んだ本の中で最も面白かったものを尋ねられると、司馬遷の『史記』を上げた。ソン氏は「話の内容が全て感動的だった」と語る。特に面白かった部分を問う質問にソン氏は「もう一度よく考えると、私の読書ノートと答えたい」「読書ノートも最終的には一冊の本ではないか」と笑いながら答えた。

 インタビュー集のある箇所でソン氏は「しんどくなることが即ち努力」と語っている。その意味についてソン氏は「しんどい状況が続くことは良い習慣ができることですよね。習慣は最初は薄っぺらいくもの巣のようですが、時間が過ぎれば鋼鉄のような鉄の棒になるからです」と説明した。常に内面を省察する求道者のような生活を送るソン氏。今の幸福を最も重視し未来に向けて準備しない「YOLO life」の考え方について問う質問にソン氏は「与えられた大切な命を、自分さえ良ければよいと考えてそんな無駄な生き方を…」とまで言ってしばらく言葉を選んだ上で「この世に生まれたなら、自分の家族にも前向きな役割を果たすべきだと思う」と述べた。

 ソン氏はメディアのインタビューを受けるたびに必ず聞かれることがある。それは「ソン・フンミン選手はワールドクラスですか」という質問だ。息子のソン・フンミン選手は世界最高の舞台であるイングランド・プレミアリーグで得点王になるほどの実力を持つが、ソン氏は息子が傲慢(ごうまん)になることを恐れており、そのため常に「ワールドクラスではない」と答える。今回の会見でも最後に同じ話題になった。ソン氏は質問を最後まで聞く前に「ワールドクラスではないから」と笑いながら強調した。ソン氏は「ボールを蹴るのがうまいだけでは駄目だ。人格も備えねばならない」とも述べた。「人格が足りないという意味か」との質問にソン氏は「ソン・フンミンは人格だけでなくボールを蹴る実力ももっと高めねばならない」と畳みかけるように指摘した。このように言葉は厳しいが、顔には笑みが浮かんでいた。この「父親としての笑顔」だけはどうしても隠せなかったようだ。

イ・ヨンビン記者

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