▲イラスト=UTOIMAGE

 韓国の狭い路地で、ベンツ車の運転手が宅配バイクの運転手に「俺が配達させたもので食って生きてんだろ」などと暴言を浴びせる様子を捉えた動画が公開され、ネットユーザーらの怒りを買っている。

 宅配バイク運転手Aさんの婚約者は4月16日、動画投稿サイト「ユーチューブ」のチャンネル『韓文哲(ハン・ムンチョル)TV』に「あまりに悔しくて腹が立つ」と、1週間前にある路地で撮影されたドライブレコーダーの映像を送った。

 映像を見ると、Aさんがバイクで路地を走行していたところ、白いベンツ車に遭遇した。路地は左右の路肩に車が止めてあり、車1台がようやく通過できるくらいの狭さだった。時速30キロで走行中だったAさんは、前方からベンツ車が路地に入ってくるのを見て、バイクを脇に寄せるために速度を落とした。

 ベンツの運転手の暴言はこのときから始まった。窓を開けて悪口を言い、ついには降りてきて「法律がなくてお前らみたいなやつら、車で押しつぶしてしまえたらいいのにな」「目玉をくり抜いてやりたい」などと言い続けた。「一生配達でもやって食って生きてろ」「俺が配達させたら、お前らそのカネ持って食って生きてるんだろ」「お前みたいなやつらのせいで社会発展がない」「物乞い野郎」など、配達ドライバーの職業そのものをさげすむような罵詈(ばり)雑言を浴びせ続けた。

 情報を提供した婚約者は「刑事告訴が可能かどうか調べたら、警察に『こういう状況はよくある』というようなことを言われた」「侮辱罪も成立しないと言われ、交際相手が精神的にすごく苦しんでいる」と訴えた。確かに侮辱罪が成立するためには、不特定多数が見ている前で起きるなど、公然性の要件を充足しなければならないが、当時暴言が浴びせられた路地にはベンツの運転手と宅配バイクの運転手の二人しかいなかった。

 ドライブレコーダーの映像を見たネットユーザーは、大半がベンツ運転手を非難し「普段抱えている鬱憤(うっぷん)を配達員にぶつけているようだ」「婚約者は涙が出ただろう」などの反応を示した。一部は、Aさんが路地を通過する際に多少スピードが出ていたと指摘しつつも、ベンツの運転手の暴言は不当だと書き込んだ。

 韓文哲弁護士もまた「これまで9万本から10万本近いドライブレコーダーの映像を見たが、これほど質の低い人は初めて見た」「ドブみたいに汚い口だ」と驚いたような反応を見せた。

 2022年に国土交通部(省に相当)が公開した「小貨物配送代行サービス事業実態調査」の結果によると、最近6カ月間で、配達従事者10人中4.3人に交通事故の経験があることが判明した。原因は「相手の運転手の未熟または不注意」が41.4%で、「配達を多くこなすための無謀な運転」(32.2%)よりも多かった。実際、宅配バイクの運転手が飲酒運転・粗暴運転・信号無視車両などと衝突してけがをしたり命を落としたりする事例はしばしば伝えられている。今年2月には、20代の女性DJが酒を飲んでベンツ車を運転し、配達業者を死なせる事故もあった。

パク・ソンミン記者

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