社説
「神・金日成」を消そうとする金正恩総書記、末期的な異常事態【4月22日付社説】
北朝鮮がこれまで故・金日成(キム・イルソン)主席について使っていた「太陽」という言葉を消そうとしている。労働新聞などは今月15日、金日成主席の誕生日を「太陽節」と呼ばず「4・15」あるいは「4月の名節」と表記した。これについて韓国統一部(省に相当)は「意図的な削除」と分析している。金日成主席が生まれたとされる万景台の呼称も「太陽聖地」から「愛国の聖地」に変更された。1997年に金日成主席の誕生日を「太陽節」としたのは金氏王朝2代目の故・金正日(キム・ジョンイル)総書記だ。金日成主席を「太陽」のような神的存在へと偶像化し、金氏一家の独裁を正当化する狙いがあった。
金正恩(キム・ジョンウン)総書記も権力を握った直後は金日成主席のスタイルを参考にした。金日成主席を連想させる服装や髪型で登場し、演説のスタイルも模倣した。金日成主席と同じく「白い飯に肉のスープ」を約束し「人民に申し訳ない」として涙を流した。自らの権力に正当性がないため、すでに神格化された金日成主席をまねることで埋め合わせようとしたのだろう。北朝鮮住民も今よりましだった金日成時代を思い起こし、一時は希望を抱くこともあったが、地獄のような現実は今も続いている。経済難は一層ひどくなったが、それでも金正恩総書記は中国との国境1400キロを全て鉄条網で閉ざした。今や脱北も難しくなり、内部では不満ばかりが高まっている。
このような危機の中で金正恩総書記は金日成主席の「神」の座を自らのものとしている。「太陽・金正恩将軍」というプラカードが登場し、労働新聞などは金正恩総書記について「主体朝鮮の太陽」という表現を使い始めた。金正恩総書記は今回の太陽節に参拝もしなかった。北朝鮮は17日に平壌でマンションの完成式を執り行い、その場で「親しいオボイ(親)」という金正恩総書記を偶像化する新しい歌を発表した。これまで北朝鮮において「オボイ」は金日成主席を意味する言葉であり、金正日総書記もあえて使わなかった。ところが金正恩総書記は金日成の「太陽」と「オボイ」を同時に、自分のために使い始めたのだ。
太陽は全ての存在の根源であり誰も奪えない権力を意味するが、金正恩総書記は金日成主席の太陽が傾き、自分こそ昇りつつあると宣伝したいようだ。しかし金正恩総書記の権力基盤は金日成主席だ。権力の世襲を受けながら金日成主席から抜け出そうとすれば、それは金正恩総書記の権力の正当性が揺らぐことを意味する。前近代的な金氏王朝だからこそ起こる末期的な症状だ。