社説
国民の前ではなく非公開の席で「申し訳ない」と述べた尹大統領【4月17日付社説】 韓国総選挙
尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は16日、テレビでライブ中継された国務会議の冒頭「総選挙を通じて明らかになった民心をわれわれ全員が謙虚に受け入れ、より低い姿勢と柔軟な態度でさらに多くの意思疎通を図り、私から民心を傾聴していく」「国政の正しい方向性を定めこれを実践するため最善を尽くしたが、国民が体感できるほどの変化をもたらすには不十分だった」と述べた。これまでの国政に対する国民への謝罪とは言いがたい内容だ。そのような反論を意識したのか、後になって大統領室は尹大統領が非公開の国務会議で「大統領から国民の意向をしっかりとくみ取れず申し訳ない」と謝罪したと発表した。「申し訳ない」という謝罪の言葉を発したのは国民の前ではなく、自分たちだけが集まる席だった。なぜそのような形を取ったのか納得できない国民も多いだろう。
尹大統領は選挙での敗北の最も大きな原因とされている妻の金建希(キム・ゴンヒ)氏を巡る問題、海兵隊員死亡事件に対する自らの高飛車で独善的な態度、意思疎通不在といった問題には一切言及しなかった。これらの問題はそう遠くない時期に間違いなく懸案として浮上するだろう。つまりこれらの問題から逃れるすべはないということだ。このように国民が本当に聞きたい重要な問題について何も語らなかったことから、「意思疎通が足りないと認めたその発表内容が意思疎通不足だった」と批判されている。大学医学部定員増問題に端を発する医療空白についても何も語らなかった。「国会と緊密に協力する」と口にはしたが、野党との協議に関して具体的な内容は何も話さなかった。国会で絶対多数を確保した野党は「大統領は相変わらず『自分が正しい』と意地を張っている。これは野党を国政のパートナーとして認めたくないということだ」と批判した。
尹大統領に残された3年の任期は間違いなく険しい道になるだろう。最も重要な労働・年金・教育・規制改革などの課題は国民の支持と野党の協力なしには前に進めない。24回行われた民生討論会で提示した数々の政策も同様だ。野党は海兵隊員死亡事件捜査への外圧と金建希氏特別検事などで波状攻撃を予告している。与党内からも特別検事に賛成する意見が出ていることから、かつてのように一糸乱れず尹大統領の指示に従うことはないだろう。
尹大統領が今後の困難な道を突き進むには、自ら国民を説得し、野党の協力を引き出す以外に方法はない。傲慢(ごうまん)な態度や意思疎通不在から抜け出し、腰を低くして理解を求め、対話による政治を実行に移さねばならない。尹大統領は非公開の会議で「私から間違っていた」と述べたそうだが、これは本心でなければならない。総選挙に敗れても何も変わらないと国民が感じれば、その時点で国政の遂行は不可能になるだろう。