▲映画『犯罪都市』シリーズの主人公、マ・ソクド刑事(俳優マ・ドンソク)

 「運転免許試験のときに人格検査も同時に実施することはできないでしょうか?」

 このところ韓国では迷惑駐車をめぐるネット投稿やニュースを頻繁に目にする。最近では大邱市南区のマンションで、BMW車が駐車場への進入口をふさぐように駐車し、他の車が出入りできなくなるというトラブルが起きて世間の怒りを買った。マンションの管理室に、自分の車ではなく別の車の駐車登録をしてほしいと要求し、聞き入れられなかったことに腹を立てて一晩中「報復駐車」をしていたのだ。マンションの関係者だけでなく、近隣住民も「車を移動してほしい」と何度も車のオーナーに連絡したが、一向に応じなかった。

 警察も駆け付けたが、私有地であるため手の施しようがないとしてそのまま引き揚げ、区庁も同様の対応だった。何の罪もない住民だけが被害を受けた。数日後、警察はひとまず車のオーナーを業務妨害の疑いで立件した。しかし、マンションの関係者らは「罰金を払えば済む話なので、高級車のオーナーにとっては全く痛くないだろう」と話した。この車のオーナーが謝罪したという話は聞かない。それどころか「早く駐車登録をしてほしい。登録してくれないなら、また入り口をふさいでやる」と逆ギレして威嚇したという。

 こうしたトラブルが最近は日常茶飯事だ。駐車問題によるトラブルは、集合住宅の騒音問題と同様にいつ誰にでも起こり得る。しかし、強力な処罰手段がない。問題が起きたらレッカー移動すればいいという声もあるが、そのときに車が傷ついたりすれば、通報者が弁償しなければならなくなるため、容易ではない。そのためインターネットのコミュニティーサイトで「公開処刑」の形で私的制裁を加えるのだ。しかしこれは根本的な解決策ではない。そのため、法改正や制度補完が必要との指摘が出ている。

 今年2月、釜山市内のマンションでも輸入車が正門のゲートバー前に駐車して他の車の進入を妨害した。問題の輸入車はこれより前、軽自動車用の駐車スペース2台分を占領して駐車していたため、管理室側が注意したところ、逆ギレしてゲートバー前に駐車したという。警備員が連絡すると、車のオーナーは「車に触れたら火を付けるぞ」と脅迫し、その後車を移動させたものの、今度は軽自動車2台分のスペースに斜めに駐車した。ある住民は「常習的な悪党なので、駐車違反ステッカーを貼った上、1カ月間駐車場への入場禁止措置も取ったのに、全く聞き入れる気配がない」として「法は誰のためのものなのか。入居者代表会などが業務妨害容疑で告訴状を提出したが、何一つ変わっていない」と話した。

 公共住宅や商業ビルの入り口を車でふさがれ、迷惑を被ったというトラブルは頻繁に目にする。しかし、痛快な復讐(ふくしゅう)エピソードはめったに見かけない。迷惑駐車をしている車の写真がナンバープレートを消された状態でネットに上がって炎上し、車のオーナーがネットで非難される程度だ。最近では、あるマンションで住民のものではない電気自動車(EV)がマンションの駐車場を無断で使用し、しかも曲がった状態で車が置かれていたため他の車が出入りできなかったという告発投稿が話題になった。この車のオーナーは1年以上も迷惑駐車を繰り返していたが、電話にも出ず、インターネットで公開されてようやく謝罪した。裁判になったケースもある。2018年には仁川市松島にあるマンションの駐車場の入り口を故意に車でふさいだとして、車のオーナーが一般交通妨害と業務妨害などの罪で起訴され、一審で懲役6月、執行猶予2年を言い渡された。しかし、ネットでは「その場で車を移動させてほしかったのに、迷惑駐車による住民の不便は誰も解決してくれず、いまさら法の審判が下ったところで何の意味があるのか」との意見が渦巻いた。

 韓国各地では今日も、駐車を巡るトラブルがあちこちで起きている。韓国国民権益委員会によると、私有地での違法駐車に関する民願(苦情)は年間2万-3万件ほどあるという。過去10年で民願の件数は150倍以上も急増した。二重駐車(もともと駐車してあった車の前や横に駐車すること)、駐車ラインを踏んでの駐車、障害者用スペースへの健常者の駐車など、口論から暴行に発展することもある。マンション、ヴィラ(低層集合住宅)、商業ビルなどでこのようなトラブルが起きた時、確実な対応方法がないため、迷惑をかけられた方が「お前も一度被害を受けてみろ」とやり返す。先月には、日常的に駐車ラインを越えて事実上2台分のスペースを占領していたベンツ車に対し、別の車のオーナーが「懲らしめてやる」とベンツの運転席ドアが開けられないよう真横にピタリと駐車し、その写真をネットに投稿した。トラブルの発端はベンツ車の迷惑駐車だったが、このケースは「報復駐車」をした車の方が処罰を受ける可能性がある。裁判所は類似の事件について、車は損傷していないものの一時的にでも車を使えない状態にして害を与えたとして、報復駐車をした方の車のオーナーに罰金50万ウォン(約5万5000円)を科した。

 韓国の道路交通法は、駐車禁止区域に車を停めた場合、警察官や市・郡の公務員が車の移動を命令できるよう規定している。しかし、建物内部・外部の駐車場や路地などは道路交通法上の道路に当たらないため、警察や地方自治体が取り締まりやレッカー移動などの措置を取ることができない。このため権益委は数年前、私有地の違法駐車にも反則金やレッカー移動の措置を可能とすべきとの見解を示した。しかしこれは勧告レベルにすぎない。

 国会でも、強制レッカー移動を可能にし、その過程で発生した損害について故意・重過失ではない場合は免責とする「駐車場法一部改正法案」などが発議された。しかし、議会では可決しなかった。最大野党「共に民主党」は今回の総選挙の公約に「駐車悪党強力処罰法」の制定を掲げた。しかし、大林大学未来自動車工学部の金必洙(キム・ピルス)教授は「最も重要なのは、運転者の市民意識を向上させるための教育・啓発的アプローチ」だと指摘した。先日、ある1枚の写真がインターネットで話題になった。マンションの駐車場に、キックボードや補助輪付き自転車、子ども用電動車などが駐車ラインをまたぐことなく整然と並べられていたのだ。怒り散らしてばかりの非常識な大人たちは、この風景を見て目を覚ましてほしい。

キム・アジン記者

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