▲イラスト=李撤元(イ・チョルウォン)

 旧日本軍は1942年にオーストラリア北部のダーウィン港を爆撃した。南太平洋の掌握が目的だった。当時オーストラリア軍の主力は英国を支援するため欧州戦線に派遣されており、またシンガポールで英国軍と共に戦ったオーストラリア軍は多くが日本軍の捕虜になった。頼りになるのは米軍しかなかった。その後米軍がガダルカナル島で日本軍を破ると太平洋戦争の流れは大きく変わり、各地の戦闘でオーストラリア軍も活躍するようになった。第1次世界大戦までオーストラリアは英国と密接な関係を維持してきたが、第2次大戦からは米国の主要な同盟国となった。

 中国があからさまに覇権を狙う前はオーストラリアと中国の関係は良好だった。当時「世界の工場」と呼ばれた中国にオーストラリアは石炭や鉄鉱石などを輸出し、巨額の利益を手にし続けた。オーストラリアの中国への輸出依存度は一時40%近くにまで高まった。それが2015年から中国人がオーストラリアの不動産買い占めを始めるとオーストラリアで住宅価格が高騰した。中国はオーストラリアの政治家に賄賂を贈り、中国人留学生は香港の民主化を支持するオーストラリア人の学生に暴力を振るうこともあった。中国企業は要衝のダーウィン港の運営権まで確保した。危機感を持ったオーストラリアは20年に米国主導の新たな安全保障の枠組み「クワッド(米国、オーストラリア、日本、インド)」に加わった。すると中国は韓国でTHAAD(高高度防衛ミサイル)報復を行ったように、オーストラリアに対しても石炭、小麦、ワインなどに高い関税をかける報復に出た。

 クワッドの中でインドは軍事協力に消極的で、その間に中国はオーストラリアに近い南シナ海を「内海」にしようとした。これに対して米国が中国の膨張を阻止するため立ち上げた新たな枠組みがAUKUSだ。オーストラリア(AU)、英国(UK)、米国(US)の英文頭文字から名付けられた安全保障の枠組みだ。この3カ国はアングロサクソン人の言語、文化、血統などを共有している。さらに米国はオーストラリアに原子力潜水艦技術を提供する破格の決断も下した。韓国には一切許容していないものだ。

 10日にワシントンで米日首脳会談が行われ、その場で日本のAUKUSへの事実上の加盟が進められるという。日本がAUKUSに加われば「JAUKUS」になる。中国の膨張阻止に必要な極超音速、AI(人口知能)、宇宙軍などの戦力開発に日本の先端技術力が必要になるからだ。日本への韓米連合司令部のような統合司令部の設置も将来的に検討するという。5万4000人の在日米軍の地位が在韓米軍以上に高まる可能性も考えられる。

 米国によるこれら一連の動きは、中国が台湾を攻撃した場合に米国と共に戦う国が日本しかないからだ。米国のウォーゲームに日本が参加しなければ、米国と言えども中国を制圧するのは非常に難しい。そのためアングロサクソン同盟が自分たち以外の人種と文化を持つ日本を加えようとしている。今後米国は何らかの形で韓国とニュージーランドもAUKUSに参加させる意向だという。韓国の安全保障政策担当者にも深い知恵と高い能力が求められている。

安勇炫(アン・ヨンヒョン)記者

ホーム TOP