IT産業
オープンAI、東京にアジア初の拠点
2022年末に生成型人工知能(AI)チャットボット「チャットGPT」を公開し、AI業界をリードしている米オープンAIが月内にも東京に事務所を設ける。日本経済新聞が1日報じた。英ロンドン、アイルランド・ダブリンに昨年事務所を開いたのに続く3カ所目で、アジアで初の拠点となる。
IT業界はオープンAIの世界進出を特別なこととして受け止めている。オープンAIは2015年、米サンフランシスコで「人類に無害なAIをつくる」ことを掲げ、非営利法人としてスタートした。しかし、最近は巨額の投資で顧客を確保し利益を得る巨大テクノロジー企業の動きに追随している。
オープンAIが初のアジア拠点として日本を選択した背景にも関心が集まっている。伝統製造業に強みがあり、相対的にデジタルトランスフォーメーションが遅れていた日本は最近、世界的なIT企業を積極的に誘致している。昨年は自国で開かれた主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)で「広島AIプロセス」を提案した。AIを使った偽情報や個人情報侵害規制など国際的なAI規範づくりを主導する狙いだ。テクノロジー業界関係者は「オープンAIの日本進出は『AI規範』を主導する日本政府とより近くで意思疎通する狙いもある」と指摘した。
オープンAIの日本進出は昨年4月、日本の岸田文雄首相とオープンAIのサム・オルトマン最高経営責任者(CEO)が日本で会談した際から予想されていた。会談後、オルトマンCEOは「日本の優れた人材と連携し、日本文化、言語に適したモデルを構築していくことを期待している」と述べた。その後、ちょうど1年後、オープンAIの日本法人設立が現実となった。
今回はオルトマンCEOの最側近であるブラッド・ライトキャップ最高執行責任者(COO)が15日、東京で記者会見を開き、法人設立に関する詳細を説明する予定だ。
日本はデジタルトランスフォーメーションの機を逸し、インターネット時代に競争力で主要国に後れを取ったと評されている。このため、AIの時代で技術導入が遅れれば、国家競争力が大打撃を受けかねないという危機感がある。
オルトマンCEOとソフトバンクの孫正義会長の関係もオープンAIが日本をアジア拠点とする要因として挙げられる。オープンAIは人間の能力を凌ぐ汎用人工知能(AGI)の開発を最終目標としている。しかし、そのために必要なAI半導体の確保に苦慮している。オルトマンCEOはオープンAIのAIモデル専用のAI半導体を独自開発しようとしたが、それを実現するために訪ねた投資家候補の一人が孫会長だ。オルトマンCEOが計画しているAI半導体は今後マイクロソフト(MS)と共同で構築する超巨大データセンター「スターゲート」にも採用されると予想される。
オープンAIは世界進出だけでなく、事業拡大にも力を入れている。1日からはチャットGPTの加入手続きを省略し、誰でも無料で自由に使えるように方針を変えた。会社は「AI機能に興味がある全ての人がAIにアクセスできるようにする」と説明した。チャットGPTは昨年5月、月間アクティブユーザー数(MAU)が18億人でピークに達した後、伸びが鈍化した。グーグルのジェミニ、MSのコパイロットなどにユーザーが分散したためだ。テクノロジー業界関係者は「オープンAIは他のビッグテック企業のように市場掌握に向けた戦略を推進する一方、障害要素をあらかじめ取り除こうとするのではないか。オープンAIは結局AI時代のグーグルやアップルになるだろう」と予想した。
シリコンバレー=オ・ロラ特派員