社説
李鐘燮・駐豪韓国大使は結局辞任へ、最初から最後まで不可解な問題【3月30日付社説】
李鐘燮(イ・ジョンソプ)オーストラリア駐在大使が辞意を表明し、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領がこれを承認した。李大使は韓国軍海兵隊員死亡事件で捜査に圧力を加えた容疑で被疑者となり出国禁止状態だったが、その間にオーストラリア駐在大使に任命され波紋が広がってから25日が経過した。この問題は最初から最後まで非常に不可解な経緯の連続だった。仮に捜査に問題があったとしても、法的に被疑者の立場にあった人物が大使に任命されたことがまず何よりも理解し難いことだった。
意図して大使という立場で海外に派遣しようとしたのであれば、最低限の捜査や法律上の手続きを終えてから出国すべきだったが、実際は大使としての信任状もない状態で直ちに出国させた。これでは逃避と指摘されて当然だろう。与党と大統領室のスタッフらは「帰国させるしかない」と尹大統領に助言したが、尹大統領はこれを受け入れなかった。尹大統領は一体何を考えていたのだろうか。その後世論がひどく悪化したため最終的に李大使は帰国するに至った。それも素直に帰国させれば良いものを、「防衛産業協力主要公館長会議」なるものを急造し、これに出席させるという強引なやり方だった。他国で勤務に当たる大使たちまで無理やりこの会議に呼ぶ形にしたのだ。最初にボタンの掛け違いに気づいた時に一気にこれを正すべきだったが、それを怠ったため徐々に追い込まれていった。李大使の辞任そのものは幸いといえるが、遅きに失したとの感は拭いきれない。
数々の世論調査によると、近く行われる国会議員選挙で与党・国民の力は苦戦している。その原因は何か政治的に大きな失敗や不祥事があったからではなく、尹大統領の強引さとコミュニケーション不在にあるという。大統領夫人の問題、今回の李大使の問題など全てそうだ。どれも解決できない難しい問題では決してなかったはずだ。
尹大統領は昨年10月のソウル市江西区庁長補欠選挙で惨敗した直後、「国民は無条件に正しい」「いかなる批判にも弁明すべきではない」と述べた。選挙を通じて明確になった国民の意向をしっかりと受け止め、これに合わせて国政を刷新する考えをこの時は持っていたはずだ。しかし今この言葉を信じる国民はどれほどいるだろうか。民心を読み取れないというレベルではなく、むしろ自分の考えにこだわり逆行してはいないか。尹大統領は自らが起こした李大使をめぐる今回の問題について未だに何も語っていない。