記者手帳
「なぜ父だけが監獄に…」 宋永吉代表の息子の理由ある抗弁【記者手帳】
「司法リスクを抱えている野党政治家は多いが、唯一宋永吉(ソン・ヨンギル)代表だけが、寒い冬に監獄につながれている」
宋永吉・元「共に民主党」代表の息子、ソン・ジュファン氏が3月26日、宋代表の保釈を裁判所に求める「涙の記者会見」を光州広域市議会で行った際に語った言葉だ。「ソナム党」を獄中設立して光州西区甲選挙区に出馬した宋・元代表について、ソン氏は「宋永吉が選挙遊説を一度もできず、無力に拘置所に居なければならないのであれば、生涯忘れられない過酷な刑罰になるだろう」とも述べた。
昨年末に身柄を拘束された宋・元代表の容疑は、2021年の民主党全党大会を前に民主党議員や地方本部長らに対して現金入り封筒6650万ウォン(現在のレートで約745万円。以下同じ)分を配ったことに関与したというものだ。違法な政治資金7億6300万ウォン(約8550万円)を受け取った疑いもある。裁判所は「事案は重く、証拠隠滅の恐れもある」として宋・元代表の身柄を拘束した。贈賄と政治資金法違反の被告人が、政権を審判すると称して党を作り選挙区に出馬し、選挙運動ができるように釈放してくれと言っている。
だが「他の犯罪嫌疑者も多いのになぜ私の父親だけ政治ができないのか」という、宋・元代表の息子の抗弁は、間違っているとばかりは言えない。現金入り封筒事件で共に起訴された議員のうち、許琮植(ホ・ジョンシク)議員は仁川東・弥鄒忽甲選挙区に出馬して選挙運動を行っている。許議員はカットオフ(公認排除)されず、予備選にまで登場し、党員の選択を得て公認状をつかんだ。
李在明(イ・ジェミョン)民主党代表は大庄洞・慰礼・城南FC・ペクヒョン洞などの事件で延々と裁判を受けているが、無事に選挙運動を行っている。裁判への出廷を巡って「私がいなくてもいいじゃないか」と裁判部と神経戦を繰り広げるほどだ。祖国革新党の曺国(チョ・グク)代表は、子どもの入試不正と大統領府監察もみ消し事件で控訴審でも懲役2年を言い渡されたが、毎日のように歩き回って「尹錫悦(ユン・ソンニョル)任期短縮」を叫んでいる。一審で懲役3年を言い渡された黄雲夏(ファン・ウンハ)議員も祖国革新党の比例8番に配置されて選挙運動をしている。
今回の韓国総選挙に出馬する686人のうち、前科があるのは239人。3人に1人は前科者という話になる。こんなことだから、「なぜ私たちだけ…」という犯罪容疑者家族の愚痴が一理あるように聞こえてしまうという、逆説的な状況が起きているのだ。
キム・ギョンピル記者