社会総合
研修医の職場離脱から3週間 医療現場は「限界」に=韓国
【ソウル聯合ニュース】韓国で医師不足などの対策として政府が発表した大学医学部の入学定員増に反発して研修医らが職場を離脱してから約3週間となった11日、病院に残った医療スタッフの疲労が限界に達している。医療の空白が長期化し、軍医や兵役の代わりに保健所などに勤務する公衆保健医師(公保医)まで医療現場に投入され、研修医の空白を埋めている。だが、公保医に頼るしかない医療が脆弱(ぜいじゃく)な地域では、公保医の不在によりまた別の医療空白が発生する兆しを見せており、「焼け石に水」との指摘も出ている。
韓国政府は2月6日、2025年度から医学部の入学定員を従来の3058人から5058人に2000人増やす方針を発表した。政府の方針に反発した研修医らは同月19日に一斉に辞表を提出。保健福祉部によると、今月8日午前11時時点で全国100の主要病院に勤務する研修医全体の92.9%に当たる1万1994人が職場を離脱した。
◇研修医の職場復帰は遅々として進まず 全国の病院は「限界」
政府は業務開始命令を出し、命令に従っていない研修医に免許停止の事前通知書を発送したが、職場に復帰した研修医はわずかだ。一部病棟の縮小や閉鎖措置を取り、救急救命室の診療が不可能になっている病院もある。
中部・大田市の主要5病院では各病院が病床の稼働率を通常の50~60%水準に減らし、一部の病棟を閉鎖するなど非常対策を実施している。乙支大学病院では救急救命室で整形外科や耳鼻咽喉科などの診療が不可能だと通知した。大田聖母病院の救急救命室では眼科の手術ができなくなっている。忠南大学病院の救急救命室では重症患者の受け入れが困難な状況だ。
南東部・大邱市にある嶺南大学病院の救急救命室では外科の患者の受け入れが不可能になっており、別の科でも診療が制限されている。
北東部・江原道では9病院の研修医390人のうち360人が辞表を提出し、復帰したのは約10人にとどまっている。研修医約200人の大多数が職場を離脱した南西部・全羅北道の全北大学病院では21の手術室を通常の30~50%のみ稼働している。
事態の長期化による病院の財政的な負担も増えている。研修医126人のうち80~90%が職場を離脱した南東部・蔚山市の蔚山大学病院は診療や手術件数が急減し、8日から非常経営体制に入った。南西部・全羅南道の全南大学病院の場合、研修医の離脱により数百億ウォン(100億ウォンは約11億円)の赤字を出したと推定している。国立大学病院は積み立てている運営費が少なく、事態がさらに長期化すれば深刻な資金難に陥る可能性がある。
◇公保医派遣に地域では懸念の声 長期化すればまた別の医療空白
政府はこの日から4週間、20病院に軍医20人と公保医138人を派遣した。
だが、公保医の派遣により、保健所への依存度が高い地域では業務への支障を懸念する声が出ている。派遣された公保医の大多数が診療や手術が大幅に縮小された診療科の専門医のため、実際には大きな助けにならないとの見方もある。
◇医大生は授業拒否 教授も集団で辞表提出の動き
大学医学部の学生も一斉に休学届を出し、政府と大学の入学定員増員の方針に反発している。教授も集団で辞表を提出する動きを見せている。
南東部・釜山市の釜山大学病院の医学部教授協議会と学生ら約70人は声明を出し、「2000人増員に対する科学的かつ合理的な根拠が不足しているのは既に明らかになった」として、「10年後以降に効果が出る政策を押し付け、国民を相手に実験を行うのは無謀」だと訴えた。教授陣は学生に留年処分が下されるか研修医に対する法的措置が取られる場合、辞職する意向を示した。中部・忠北大学病院の非常対策委員会約100人は8日、大学前で入学定員拡大に反対する集会を開いた。同大学の医学部の在学生304人のうち247人は大学側に授業を拒否する意向を示し、開講した先月19日から授業に出ていない。建国大学病院忠州キャンパスの医学部在学生は127人のうち81人、医学専門大学院の在学生は135人のうち134人が休学届を出した。