サッカーの元韓国代表選手・李天秀(イ・チョンス)氏(42)が手にドリルを持った男から脅迫された。同氏は与党・国民の力の公認候補として4月10日の国会議員総選挙に仁川市桂陽乙選挙区から出馬する元喜竜(ウォン・ヒリョン)前国土交通部(省に相当)長官の後援会長を引き受け、約50日間にわたる選挙遊説日程で行動を共にしている。

 本紙が8日に入手した仁川市桂陽区林鶴洞のある防犯カメラ映像によると、7日午後、身元不明の男が左手にドリルを持って歩いてきて、元喜竜候補の選挙運動キャンプ関係者たちが有権者とあいさつをしていた商店街の建物前に立ち止まり、20秒間待っていた。

 元喜竜候補と李天秀氏が建物の外に出ると、この男は元喜竜候補と握手を一度し、続いて李天秀氏を見るや肩をつかみ、引っ張ってドリルを握った手を李天秀氏の下腹部に近づけ、話しかけた。

 当時、現場にいたキャンプ関係者によると、この男は「李天秀とちょっと話がある。悪く思っていなかったのに、(今回の件で)ガッカリした」「ガッカリしたんだよ。オレがお前をこのままにしておけるか」と言ったという。

 これに対して、李天秀氏が「いや、党のことでそうおっしゃっているようだが、なぜこんなことをするのか」と言うと、この男は「見ていろよ。オレはお前の女房と娘たちがどこに住んでいるのか全部知っている。放っておくと思うか? 気をつけろ」と言ったとのことだ。この間、男はドリルのスイッチに指を当てていた。

 様子がおかしいことに気づいた関係者が近付いていき、「李天秀氏は政党ではなく本人の所信により支持してくださっているのだ」と止めに入った。李天秀氏が「私の名刺を差し上げる」と言うと、この男は「いらない」と答え、あっち行けとでも言うように手を振り、去って行った。

 李天秀氏は7日午前にも仁川市内の桂陽駅で出勤中に有権者たちにあいさつをしていた際、身元不明の男から暴行を受けた。この男は握手を求めるふりをしながら李天秀氏に近づき、手を握って膝で李天秀氏の太ももを蹴った。さらに、周囲の制止を振り切って暴行を加えようと試みた。

 同日夜10時ごろ、元喜竜候補の選挙事務室側から仁川・桂陽警察署に「李天秀後援会長が暴行を受けた」との通報があったため、同署は捜査の上で加害者の身柄を確保したことが分かった。桂陽駅では60代の男が、林鶴洞では70代の男が李天秀氏に暴行を加えた。警察は加害者をひとまず暴行容疑で取り調べた上で、関連法の検討を経て公職選挙法違反容疑を適用するかどうか決める方針だ。

 李天秀氏が暴行の被害に遭ったことが報じられると、元喜竜候補は交流サイト(SNS)「フェイスブック」を通じ、「明らかな犯罪が発生した。このようなことが二度と起こらないよう、あらゆる手段を講じる」と述べた。

 国民の力も「選挙の場での『暴力』はいかなる理由でも決して容認できない」と糾弾した。 尹在玉(ユン・ジェオク)院内代表は8日、国会で開かれた院内対策会議で、李天秀氏に対する暴行に言及し、「法治国家であってはならないことだ」と批判した。そして、「選挙は民主主義の祭りだ。このように暴力が横行してはならない。たとえ支持政党や候補が違っても、自身の政治的表現は票によって行うことであり、暴力を振るってはならない」と強調した。

 また、同党の朴正河(パク・ジョンハ)首席報道官は「民主主義の花であり祭りである選挙を前に、絶対に起こってはならないことが再び発生した。私と政治的立場や意見が違うからと言って、度を越した非難や物理的な圧力を行使して恐怖をあおる行為は絶対に見過ごせない重大犯罪だ」と強調した。

 8日に桂陽警察署で告発人調査を終えた李天秀氏は「元喜竜候補支持を宣言して以降、罵倒されることが増えたが、じっと我慢してきた。だが、今回は家族まで脅迫されたため、とうてい我慢できなかった」と語った。

ヤン・ジヘ記者

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