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ナワリヌイ氏の死を巡る四つの疑問…ロシア情報機関職員が刑務所を訪れた2日後に死亡
ロシア国内に残った最後の民主活動家でプーチン大統領の最大の政敵と呼ばれたアレクセイ・ナワリヌイ氏(48)が刑務所で死亡したが、その死因については数々の疑惑が次々と浮上している。まず死因が明確でない上に、遺体がどこにあるかも全く分からない。死亡の2日前にロシア情報機関の職員が突然刑務所にやって来たとの証言も出ているという。
■消えた遺体
ナワリヌイ氏の報道官を務めるキラ・ヤルミシュ氏はナワリヌイ氏死亡翌日の17日「遺体は行方不明」と明らかにした。ヤルミシュ氏がナワリヌイ氏の母リュドミラさんと共にナワリヌイ氏の死亡したロシア北部ヤマロ・ネネツ自治管区の第3刑務所を訪れ遺体の確認を求めたところ、「ここにはない」と言われたという。検死のため運び出されたはずの地元の村の霊安室にも遺体はなかった。ヤルミシュ氏は「(検死を口実に)政府はうそをついている」との見方を示し、リュドミラさんは「捜査官たちは遺体を隠すためあらゆる手段を使っている」と批判した。
遺体が行方不明になったことで暗殺説が一層疑われるようになった。遺体が遺族に提供された場合、自然死ではない外力や毒物を使った他殺の証拠が表に出る可能性があるからだ。検死を口実に証拠隠滅を図っているとの見方もある。
ロシア政府が最後まで遺体を返さない可能性もある。ナワリヌイ氏の墓地が反プーチン抵抗運動のシンボルや中心地になる恐れがあるからだ。
■計画的な暗殺か
ナワリヌイ氏死亡の発表も非常に早かった。刑務所は現地時間の16日午後2時19分にナワリヌイ氏が死亡したと発表した。正式な死亡時間(午後2時17分)からわずか2分後だ。ロシア大統領府の短い論評はそれから7分後に出された。ロシアの人権団体グラグ・ネットは「ナワリヌイ氏の死は分や秒の単位で事前に緻密に計画されていた」と主張している。
ロシアの独立系メディア、ノバヤ・ガゼタは「同じ刑務所の収監者たちは当日午前10時にナワリヌイ氏の死亡を知っていた」と報じた。正式な死亡時刻まで約4時間にわたりナワリヌイ氏の死亡を発表するためさまざまな準備が行われていたのだ。ノバヤ・ガゼタは「ナワリヌイ氏が死亡する2日前に正体不明の複数の車が刑務所に入った」と伝えた。英タイムズなどは同日「ロシアの情報機関である連邦保安局(FSB)の担当者が刑務所を訪れ、監視カメラや盗聴器の一部を止めて解体したようだ」と報じた。
■前日まで元気だったナワリヌイ氏
ナワリヌイ氏は死亡する前日の15日まで元気だったという。この日は刑務所からオンラインの裁判に出席し「裁判が遅れたので領置金がなくなりそうだ。裁判官さん、お金を貸してください」と冗談を言う様子も公開された。
ロシア政府は表向きには「ナワリヌイ氏の死因は血栓症」と主張している。血液の固まりが血管を詰まらせる病気のことだ。これに対して西側メディアは「信じられない」と反論している。英BBC放送などは「包括的であいまいな言葉だ」「事件の性質から検死もできなかったはずだ。血栓が原因と主張するのはおかしい」との見方を示した。
別のメディアは「血栓を誘発する物質を無理やり注入してから血管が狭くなる寒い環境に置いて死に至らせた」と疑っている。ノバヤ・ガゼタは「ナワリヌイ氏は死亡した当日、気温がマイナス20度の運動場に4時間ほどいた」と報じた。
■プーチン大統領は沈黙
米国のバイデン大統領は16日「ナワリヌイ氏の死はプーチン大統領とその取り巻きたちが行った何らかの行動の結果という点に疑いの余地はない」と批判した。ミュンヘン安全保障会議に出席した西側の首脳や閣僚らも「ナワリヌイ氏はプーチン大統領と彼の政権により殺害された」と批判した。
これらの相次ぐ批判にプーチン大統領は異常なほど沈黙を守っている。昨年8月にロシアの民間軍事会社ワグネルのプリゴジン氏が飛行機事故で死亡した際にプーチン大統領は翌日に哀悼の意を表したが、今回はそれと対照的だ。
パリ=チョン・チョルファン特派員