▲写真=NEWSIS

 この1年ほどサッカー韓国代表チームを率いてきたユルゲン・クリンスマン氏は「スマイル監督」と呼ばれた。重苦しい状況でもゆとりを失わない態度は、本人には活力を与えたかもしれないが、ファンにとっては不愉快だった。同氏は選任された直後から非難の声を招いた。現役選手時代はドイツ代表の主力FWとして1990年のワールドカップ(W杯)大会や1996年の欧州選手権(UEFA EURO)でトップをけん引し、見事な成績(108試合47ゴール)を残したが、指導者としては落第点だったためだ。

 2006年のドイツW杯で「戦力が以前より劣る」と評されたドイツ代表チームを率いて3位になり、それなりの成果を挙げたが、これも(ヨアヒム・レーヴ氏ら)有能なコーチたちのおかげだという指摘が多かった。その後、バイエルン・ミュンヘン(勝率57%)、米国代表チーム(56%)、ヘルタ・ベルリン(30%)などで監督を務めたが、成績は芳しくなかった。ヘルタ・ベルリンでは監督に就任して3カ月後の2020年2月、交流サイト(SNS)で一方的に辞任の意向を明らかにし、チームを去ったため、「無責任な監督」という批判が殺到した。 その後、どのチームにも呼んでもらえなくなった監督を韓国が呼んだのだ。

 ドイツ出身で大韓サッカー協会のマイケル・ミューラー韓国代表チーム戦力強化委員長は、クリンスマン氏選任時、「単なる指導者ではなく、管理者であり、選手たちにモチベーションを与えられる監督だ」と強調したが、実情はそうではなかった。自由奔放なチーム運営を勲章のように掲げていたが、その裏には「選手団統率失敗」という副作用が伴っていた。その結果、中心選手同士で衝突があったにもかかわらず、これを適切に管理できず、競技力に悪影響を及ぼした。「ワンチーム」を組織化するにあたって無能だったということだ。

 新しい選手の発掘にも消極的だった。実力が検証済みの欧州組の代わりに、韓国プロリーグの選手たちを観察し、新たな有望選手を加えなければならなかったのに、大半の時間を外国で過ごし、こうした任務も放棄した。アジアカップではこれらの盲点がそのまま結果に現れてしまった。短期間に多くの試合をこなさなければならないという大会の特性上、全選手をまんべんなく生かし、体力を温存すべきだったが、グループステージからベスト4まで特定の選手たちだけを集中的に投入した。普段から選手をさまざまな角度から分析したり、長所と短所を把握したりしていなかったためだ。

 指摘が数多くあったものの、クリンスマン氏は「アジアカップが行われている最中だ。大会の結果を見てほしい」と言っていた。しかし、その約束も守れなかった。15日の大韓サッカー協会戦力強化委員会にオンラインで出席したクリンスマン氏は「戦術がなかったという指摘には同意できない。選手団の不和が競技力に影響を及ぼした」と責任を転嫁するような姿勢を見せた。

 クリンスマン氏が更迭されたことから、サッカー韓国代表監督の「黒歴史」がまた繰り返されることになりそうだ。サッカー韓国代表専任監督制が導入されたのは1992年。フース・ヒディンク氏(77)=オランダ=が2002年韓日共催W杯で「4強神話」(1年6カ月在任)を達成して以降、22年間で12人の専任監督が指揮を執った。そのうち、W杯本大会のために4年余りの期間をかけて十分に備えることができた監督は、2018年8月に就任して2022年12月まで指揮を執ったパウロ・ベント氏(54)=ポルトガル=だけだ。2010年南アフリカW杯でベスト16入りを果たした許丁茂(ホ・ジョンム)氏(69)も2007年12月から2010年7月まで司令塔を務め、比較的長かった。ヒディンク氏以降、最も長く監督を務めたこの2人だけがアウエーの地で開催されたW杯でベスト16入りを達成した。しかし、その他の監督たちはほとんどが1-2年しか持たなかった。

 クリンスマン氏更迭はやむを得ないとはいえ、課題は依然として残っている。韓国代表は現在、北中米W杯2次予選の最中だ。来月21日(ホーム)と26日(アウエー)にタイ(国際サッカー連盟〈FIFA〉ランキング101位)と対戦する。新たに監督を探して選ぶには時間がない。このため、ひとまず当分の間は臨時監督体制になる可能性が高い。現在、韓国(2勝)は中国・タイ(以上、各1勝1敗)、シンガポール(2敗)と同じ組で競い合っている。大韓サッカー協会の鄭夢奎(チョン・モンギュ)会長は「W杯予選に向けて次期監督の選任作業に直ちに着手する。戦力強化委員会を新たに立ち上げ、委員長も選任する」と語った。

 大韓サッカー協会は今回のアジアカップ期間中、選手間の衝突問題について詳しい状況を把握し、後続措置を取るものとみられる。この結果によっては一部の選手が代表チームの招集から外されるかもしれない。大きく揺らいでいるサッカー韓国代表の再建は、これからが正念場だ。

チャン・ミンソク記者

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