萬物相
「李承晩について何も知らなかった」…映画『建国戦争』上映館から湧き起こる拍手【萬物相】
李承晩(イ・スンマン)韓国初代大統領の功績を描いたドキュメンタリー映画「建国戦争」の上映館は全国301カ所に達する。最初は132カ所だったが、それがほどなく2倍以上となった。建国大統領の李承晩と彼が建国した国で生きてきた国民との出会いが映画館で実現したのだ。映画が上映される100分間、暗い館内では自責のため息やハンカチで涙を拭く様子が幾つも見られた。記者もこの映画を見て何度も興奮し、目頭が熱くなった。
映画評サイトには「李承晩について知らなかった自分が恥ずかしい」といったコメントが相次いだ。「Say No の教え」の著者は「これまで李承晩に対する考え方が偏っていたことを告白したい」と明かし、映画を作る側のキム・ドギョン監督も「長い間李承晩について知らず誤解していた」とした上で「ファクトさえ伝われば李承晩に対する間違った考え方は変わるだろう」と確信しているが、これは李承晩の真実を知って考えが変わった自らの経験を国民と分かち合いたい一種の告白だろう。
「建国戦争」は李承晩に対するこれまでの誤解を解くことに力を入れている。李承晩を非難する側は大韓民国単独政府樹立を訴えた李承晩の「井邑宣言」について「民族を分断してでも権力の座を手にしたい老人の強欲」と批判する。これに対してこの映画は「李承晩が帰国する前にソ連のスターリンは北朝鮮でのソ連寄り政権樹立を指示した」「南北間の38度線通行を禁じたのもソ連」という歴史的事実を根拠に反論している。6・25戦争が始まった直後に米国大使は李承晩に海外への逃避を促したが、李承晩は拳銃を手にしながら応じなかった。これに対して北朝鮮の金日成(キム・イルソン)は仁川上陸作戦で戦況が不利になると家族を満州に逃れさせた。二人のこの対照的な行動も映画にはしっかりと描かれている。
今月1日に上映が始まった「建国戦争」は予想以上の人気を博している。初日に5400人の観客を記録した時点では「旧正月連休から上映が始まる大作に押されるだろう」といった悲観的な見方が多かった。ところがふたを開けてみると観客数は24万人を突破し、連休中に最も多くの観客を集めた「ビッグ3」に入った。何度も繰り返し見た観客も多く、また「自分しか見ないのはもったいない」とチケットを買って知人に配るケースもあったようだ。
映画が終わり館内のライトがつくと観客席から拍手が相次いだ。これは上映された全ての映画館でそうだったという。「映画を見て拍手をするなんて、この前はいつだったか記憶にない」という声も聞かれた。「建国大統領の李承晩をあまりにも知らなかった」という自責の念、「今やっとしっかり理解した」という喜びの声、「大韓民国奇跡の歴史の第一歩を踏み出した巨人への感謝」など、さまざまな思いが同時に込められた拍手だろう。次は李承晩の人生そのものを描いた映画をぜひ期待したい。
金泰勲(キム・テフン)論説委員