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サッカー:「カタールの惨事」 韓国代表まさかの枠内シュート0本、ヨルダンに敗れ決勝進出ならず アジア杯2023
試合終了のホイッスルが鳴ると、韓国代表チームのキャプテン・孫興民(ソン・フンミン、31)=トッテナム・ホットスパー=の両足はその場から動かなくなった。ユルゲン・クリンスマン韓国代表監督(59)=ドイツ=をはじめ、多くの選手たちが慰め合い、ハグをしたが、ソン・フンミンは両足を離さなかった。やっと放送局のインタビューに応じるため足を動かしたのは10分ほどたった時のことだった。両目には涙がにじんでいた。目を赤くして、しばらくの間、言葉を選んでいたが、「何と言えばいいか分からない。申し訳ない」と頭を下げた。
三度目の奇跡はなかった。韓国代表チームは7日、カタール・アルラヤンのアフメド・ビン・アリ・スタジアムで行われたアジア・サッカー連盟(AFC)アジアカップ・カタール大会準決勝戦で、ヨルダンに0-2で敗れた。試合に勝つのは容易でないと予想されていた。ヨルダンはグループステージ第2戦で2-2と引き分けた相手だ。韓国は16強、準々決勝と連続して後半アディショナルタイムに同点ゴールを決めて延長戦までもつれ込み、体力が底を突いた状態だった。
しかし、予想よりももっと一方的な試合だった。試合中のボール支配率は69.6対30.4(%)と韓国が上回ったが、シュートを試みた本数は8対17と下回った。枠内シュートは0対7だった。ペナルティーボックスの中で許したシュート本数だけで9本。これは、ボールを持っている間に効率が落ちたという意味だ。警告累積で出場停止となった金ミン哉(キム・ミンジェ、27)=FCバイエルン・ミュンヘン=の不在が大きく感じられた。
試合開始のホイッスルが鳴るやいなや、激しい攻撃が展開された。覚悟を決めたかのように前方にプレッシャーをかけながら波状攻撃を繰り広げるヨルダンに韓国は苦戦した。先頭に立ったヨルダン唯一の欧州組ムサ・アルタマリ(26)=モンペリエ=と、韓国とのグループステージ第2戦で得点したヤザン・アル・ナイマト(24)=アル・アハリ=が韓国を悩ませた。GK趙賢祐(チョ・ヒョヌ、32)=蔚山現代FC=は前半戦で終始、四方八方に飛び、相手のシュートを阻止した。アル・ナイマトと1対1となった場面ではシュートが顔に当たり、起き上がれなくなる一幕もあった。
すきだらけの守備は結局、失点につながった。後半8分、不安な面を露呈していた朴鎔宇(パク・ヨンウ、30)=アル・アインFC=がDF陣に送ったボールをアルタマリが奪い、すぐに走り出して、空いたスペースにボールを出した。そして、追いかけてきたアル・ナイマトが飛び出した趙賢祐の上にボールを高く浮かせてシュートし、得点した。ヨルダンを応援する観客であふれたスタジアムには歓声が鳴り響いた。朴鎔宇を外し、曺圭成(チョ・ギュソン、26)=FCミッティラン=を投入して攻撃手の数を増やしてみたが、あまり効果は見られなかった。
一度奪われた勢いを取り戻すのは難しかった。後半21分、アルタマリはセンターラインの右側からボールをキープして走り込み、韓国のDFはその前にバタバタと崩れた。アルタマリは左足で巻くシュートを放ち、追加ゴールを決めた。クリンスマン監督は黄喜燦(ファン・ヒチャン、27)=ウルバーハンプトン=、李在成(イ・ジェソン、31)=1.FSVマインツ05=を外し、梁鉉俊(ヤン・ヒョンジュン、21)=セルティックFC=、鄭優営(チョン・ウヨン、24)=シュトゥットガルト=を投入したが、無駄だった。
この日の韓国は戦術がないのも同然だった。きっちり一文字のラインをキープしなければならないDFラインは粗く、攻撃も有機的なパスがつながらなかった。李康仁(イ・ガンイン、22)=パリ・サンジェルマンFC=が試合中盤までピッチのあちこちを走り回ったが、収穫はなかった。最前方に位置する孫興民はパスがなく、試合中に孤立し、シュート1本試みるのも難しかった。
「アジアの盟主」を自任した韓国だが、1960年以降、アジアカップでの優勝がない。韓国は孫興民、李康仁、金ミン哉ら活躍目覚ましいメンバーを擁して64年ぶりのアジアカップ優勝を狙っていた。
韓国は国際サッカー連盟(FIFA)ランキング23位で、ヨルダン(同87位)より上だった。しかし、こうした客観的なランキングはこの日、ただの数字に過ぎなかった。試合終了のホイッスルが鳴ると、ベンチにいたヨルダンの選手たちはヨルダン国旗を振りながら走り出した。スタジアムを埋め尽くしたヨルダンの観客たちは足を踏み鳴らしながら大歓声を上げた。ヨルダンの選手たちは肩に国旗をかけて喜びを満喫した。
アルラヤン(カタール)=イ・ヨンビン記者