▲先日あるユーチューバーが公開したクローン犬。この犬はユーチューバーが企業に依頼して一昨年死んだペットを複製したものだという。/ユーチューブ

 今年に入って韓国のある動物複製会社が死んだペットのクローンを作成したとして警察に告発され、これをきっかけにペットのクローンを巡る議論に火が付いた。動物のクローン自体は合法だが、その過程で代理母となる犬が犠牲になることや、「たとえ動物でも人間が生命を復活させてもよいのか」という根本的な疑問が浮上しているのだ。

 先日あるユーチューバーが「ペットの犬が戻ってきました」というタイトルの動画をアップした。動画によると、この犬は一昨年死んだペットのクローン犬を業者に依頼して作成したものだという。ユーチューバーは「多くの時間が流れたが、ついに再会できた」「今はまだ韓国ではペットのクローンは珍しいが、私によって誰かがクローンについて知り、また別の誰かが『ペット・ロス』を克服できるよう願っている」とコメントした。すると市民団体の動物自由連帯はこのペットのクローンを作成した会社を動物保護法違反の容疑で警察に告発した。この団体のチョ・ヒギョン代表は「会社の所在地を調べて問い合わせたところ、この会社は動物生産業と動物販売業での許可は受けていなかった」「不法な動物生産と販売で生命が金もうけの手段として利用されている」と主張した。2017年と19年にも犬のクローン実験を行ったある大学教授が告発されている。

 クローンはペットの皮膚から体細胞を取り出して複製する受精卵を作り、これを代理母となる犬の子宮に着床させる方法で行われる。費用は1匹当たり8000万-1億2000万ウォン(約880万-1300万円)だ。中東など海外でも高額を受け取りペットや何らかの事情がある動物のクローンを作成するケースは珍しくない。人間のクローンは不法だが、動物のクローンは2022年8月の動物保護法改正で可能になった。ペットを飼っているキムさん(25)は「送り出した(死んだ)犬にクローンでもよいからまた会いたいという思いは十分に理解できる」としながらも「そのために別の犬が利用され犠牲になることは非常に気になる」と語る。ペット関連のネット掲示板には「代理母となる犬に罪はない」「クローン犬も厳然たる別の生命だ」「クローンではなく健全な別れが重要だ」などの意見も掲載されている。

 今クローンを作らずとも、将来のクローンに向け準備する「体細胞保管」を専門とする企業も2社存在する。ペットの皮膚の一部を取り出して数百万の体細胞を培養し、液体窒素の容器で冷凍保管するという。ペットの死後24時間以内なら体細胞の採取は可能で、体細胞があればいつでも取り出してクローンを作ることができる。ある保管会社では費用は330万ウォン(約36万円)で、2019年からこれまで保管中のペット細胞は200以上に上るという。

 この会社の社長によると、ペットが高齢になったとか、健康が悪化した時に連絡してくる客が多いという。また体細胞採取の時期を逃した場合、DNAでも分離して保管を希望するケースもあるそうだ。社長は「死んだペットの体細胞を保管するだけでも心理的に癒やされる方が多い」と語る。別の保管会社も「ペットのクローンを希望する場合は国内外のクローン作成会社に細胞を安全に送ります」と宣伝している。

 獣医学会の関係者は「犬のように個体数が多い動物は卵子と代理母の犬を手に入れやすく、クローンも技術的にさほど難しくはない」とする一方「人間が人間にとって最も近い友人となるペットを複製するわけだが、これが果たして生命倫理の観点から問題がないか今後も論争は続くだろう」と予想している。

オ・ユジン記者

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