▲イラスト=イ・チョルウォン

 韓国の高校3年生Aさんは昨年12月、マンションの4階から飛び降りた。大学修学能力試験(修能、日本の大学入学共通テストに相当)で医学部を志望したものの、望む点数が得られなかった。ところが、普段から模擬試験の点数が低かった友人が随時募集(随時、日本の推薦入試に相当)で医学部に合格すると、極端な行動を起こした。Aさんは「私よりも勉強ができなかった友人が医学部に合格したというのに、私が行けないというのがとても悔しい」と涙ぐんだ。「大学が全てではない」という精神科医の言葉にも耳を貸さなかった。中学生のBさんは、薬物の過剰摂取や自傷行為、自殺の試みなどで最近精神科に入院した。学校の友人たちにいじめられたのが原因だったという。

 現在、教育現場では「心の病」を患っている青少年の問題が深刻な水準に達している。2022年に精神科に入院した10-20代は1万6819人で、全入院患者の22.2%を占めた。昨年上半期だけで1万1016人の10-20代が精神的苦痛を理由に入院した。入院患者数は増え続けている。22年に自傷・自殺で救急病院に運び込まれた患者は4万3268人だが、このうち1万9972人(46.2%)が10-20代だった。保健福祉部(日本の省庁に当たる、以下同じ)が与党「国民の力」のペク・チョンホン議員室に提出した資料によると、22年にうつ病などで治療を受けた患者のうち、19年(コロナ前)に比べて最も増えた年齢層は20-29歳(51%)と10-19歳(46.9%)であることが分かった。

 大田市の高校生Cさんは昨年、学校で自分の手首をナイフで切った。教師には「誰かが私を殺してくれたらうれしい」という話までした。学校は「重度のうつ病の疑いあり」として両親に知らせた。しかし、Cさんの両親は「思春期には誰もが経験する」「うちの子は問題ない」と精神科の治療を拒否した。現場の学校と教師は自殺や高危険群などに分類された学生の保護者に対し、病院での治療を勧告している。しかし、このうち20%は「家では一切問題ない」「思春期は皆同じ」と勧告を無視している。精神科治療に対する偏見と拒否感が子どもたちの病をさらに拡大しているのだ。

 教育部は昨年、小学1年、4年、中学1年、高校1年の4学年173万1596人の生徒を対象に心理検査を行った。その結果、2万2838人が「自殺危険群」と分類された。小・中・高の12学年で計算すると、自殺危険群はおよそ7万人に上るといった見積もりになる。4学年のうちカウンセリングが必要な「関心群学生」も8万2614人に上った。12学年に換算すれば、25万人の生徒が治療の対象というわけだ。専門家は「検査で明らかになっていない自殺危険群と関心群に属する生徒はもっと多い」と見ている。

 Dさん(19)は最近、手首にバーコードのように線を引いて、病院を訪れた。普段、両親と仲が悪いDさんは、夜一人でいる時、憂鬱(ゆううつ)な気持ちになると自傷行為の衝動に勝てず、身体を傷つける。一度は腕に注射針を刺し込んで血を抜くという自傷行為を行ったこともある。翰林医科大学のホン・ヒョンジュ教授は「青少年たちは、最初は少量の血を流す程度に身体を傷つけるところから始まって、少しずつ度合いを増しながら傷口深く切り付ける。やがては縫わなければならないようになる」と説明した。

 10-20代が「心の病」を患う理由はさまざまだ。延世大学医学部小児精神科のシン・ウィジン教授は「入院した学生たちをカウンセリングしてみると、ほとんどは家庭に問題がある」とし「立派な専門職の親も成績のことで子どもを叱り、塾だけに通わせることが『情緒的虐待』になり得るということを心得ていなかった」と話す。マウムヌリ学習クリニックのチョン・チャンホ院長は「最近の子どもたちは、物質的には豊かで、さまざまな学校外教育を受けることができるため、得意なものも多いが、両親の期待に応えなければならないといった圧力も非常に多く受けている世代」という。ネット上でのいじめも10代の心を傷つけている。

 ネット上に自傷行為や自殺関連の情報があふれているのも問題だ。特定のソーシャルメディアには、青少年の自傷行為の経験談や写真がリアルタイムで掲載されている。大韓精神健康医学科のキム・ドンウク会長は「青少年がソーシャルメディアに自傷行為を行った証拠を掲載することで、所属感や同質感を感じる文化までが拡散しようとしている」という。

 嘉泉大学小児精神科のペ・スンミン教授は「校内のカウンセリング機関である『ウィクラス』は、現状況では校内暴力など目に見える問題だけに集中するほかない」とし「さまざまな側面から青少年の心を察し、カウンセリングする機能をさらに構築していかなければならない」と指摘する。ソウル大学病院小児青少年精神科のキム・ジェウォン教授は「米国小児青少年科学会は、満12-18歳の小児青少年を対象に毎年1回うつ病診断の検査を受けるよう呼び掛けている」とし「韓国も年1回程度検査を受けられるようにし、危険群にいる子どもたちが入院できる病棟も増やしていかなければならない」と述べた。

崔銀京(チェ・ウンギョン)記者、オ・ユジン記者、チョン・ヘミン記者

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