▲朝鮮中央テレビ・聯合ニュース

 北朝鮮が昨年輸入したぜいたく品が前年比で3倍増を記録したことが分かった。最近の深刻な経済難で地方では配給制度が崩壊状態にあるにもかかわらず、金正恩(キム・ジョンウン)総書記一家や指導層のぜいたく品消費は逆に増加しているのだ。

 中国海関総署が発行した北朝鮮のぜいたく品輸出入内訳を韓国与党・国民の力の尹相現(ユン・サンヒョン)議員(国会外交統一委員会所属)が公開した。それによると昨年北朝鮮のぜいたく品輸入額は8594万ドル(約127億円)で、これは2022年の2851万ドル(約42億円)に比べて3倍以上増えたことになる。中国海関総署は韓国の関税庁に相当する。

 その具体的な内訳を見ると、ぜいたく品の典型とされる高級時計は2022年の17万ドル(約2500万円)から23年は935万ドル(約13億8000万円)と54倍に増え、革製品や毛皮製品はいずれも15倍ほど増加していた。

 これらのぜいたく品はほとんどが平壌に住む富裕層による贈収賄目的で輸入されているという。

 金総書記は今月23-24日に開催された朝鮮労働党中央委員会第8期第19次政治局拡大会議で「党と政府は住民に基本的な生活必需品さえ円滑に提供できない情けない状態」と叱責(しっせき)した。

 北朝鮮における地方での配給制度は崩壊レベルの深刻な状況だが、平壌ではぜいたく品輸入が急速に増加しているのだ。

 問題は一連の輸入の実態を中国が隠蔽(いんぺい)している疑惑だ。

 実際に輸入の内訳を改めて詳しく確認すると、北朝鮮による昨年の自動車と自動車部品の輸入価額は2万ドル(約290万円)だった。

 しかし金総書記は今月8日に韓国で3億ウォン相当(約3300万円)の新型ベンツS650マイバッハに乗る様子が公開され、今月14日には同じく韓国で2億6000万ウォン(約2900万円)相当のベンツGLS600マイバッハSUVに乗り降りする様子も公開された。

 北朝鮮が中国から輸入した1年分の乗用車価額は金総書記が利用しているマイバッハ1台分価格の10分の1にも満たない。

 韓国統一研究院の呉庚燮(オ・ギョンソプ)先任研究委員は「高級車の購入代金として2万ドルはあまりに少ない」とした上で「中国当局は国連制裁をしっかり守っていると誇示するため統計上の数値を捏造(ねつぞう)あるいは隠蔽している可能性が高い」と指摘した。

 尹相現議員は「北朝鮮がぜいたく品輸入を増やせた理由は中国政府が制裁の実行に消極的だからだ」「北朝鮮では地方の経済状況が深刻で、生活必需品も不足しているが、金総書記はぜいたく品を購入し党、軍、政府のプレゼント統治に使っている」と批判した。

イ・テヒョン記者

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