▲慶尚南道金海を拠点とするタイルメーカーの三栄産業は経営悪化により債務超過に陥ったとして130人の従業員に解雇を通知した。/聯合ニュース

 慶尚南道金海に本社を置くタイルメーカーの三栄産業が経営悪化を理由に計140人の役員と従業員に解雇を通知した。三栄産業は総額1兆ウォン(現在のレートで約1100億円、以下同じ)を寄付したことで知られる故・李鍾煥(イ・ジョンファン)三栄化学グループ名誉会長が設立した会社だ。

 三栄産業と金海市によると、金海市進永邑荷渓路に本社と工場を置く三栄産業は15日付でハン・ギムン代表を除く役員と140人の社員に解雇通知を行った。経営悪化に伴う支払い能力喪失が解雇の理由だという。

 金融監督院電子公示システムの三栄産業監査報告書(2020-22)によると、同社は2020年に債務超過に陥って以来負債が膨れ上がり、負債総額は22年に247億3444万4227ウォン(約27億3000万円)、23年には197億5699万349ウォン(約21億8000万円)を記録した。現在の負債は累計で160億ウォン(約17億円)で債務超過状態となっている。

 建設景気の悪化で建築用資材のタイル販売が不振に陥り、これに原材料価格の高騰やガス代の値上げなどが追い打ちをかけ赤字が膨れ上がった。同社は昨年12月1日から休業しているが、それから約1カ月で社員の解雇に踏み切った。

 旧正月連休を2週間後に控え突然の解雇通知を受けた社員らは茫然自失しており、何らかの対策が出ることを期待している。現時点で賃金の未払いはないが、会社側には現在社員の退職金32億ウォン(約3億5000万円)を支払う余力はないという。

 三栄産業労働組合のソ・ムヒョン委員長は「ほとんどの社員が一生涯の職場と考えて働いてきた。現状では再就職も難しい状況だ」「創業主の李元会長の息子のイ・ソクチュン会長も三栄産業代表だったし、先代の血と汗が染みた事業場に対する責任感を持って問題を解決すべきだ」と主張している。

 三栄産業は1972年に故・李鍾煥元三栄化学会長が設立した。李会長は「冠廷・李鍾煥教育財団」などを通じて1兆7000億ウォン(約1900億円)相当を寄付したことから「寄付王」と呼ばれている。李鍾煥元会長は会社の業績が悪化する中でも2002年に設立した同財団を通じて寄付を続けてきた。とりわけ21年の監査報告書には「124億5300万ウォン(約13億7000万円)の機械装置を(財団に)寄付した影響で当期純損失が151億5300万ウォン(約16億7000万円)発生し、これにより債務超過に陥った」と記載されている。社員らも「この頃から会社の経営が悪化した」と口をそろえる。

 昨年9月に李鍾煥元会長が死去すると、子供たちは赤字状態の会社株相続を放棄した。会社は現在専門の経営者により経営が続いているが、経営状況の悪化で閉鎖が避けられない状況に追い込まれている。

 韓国雇用労働部(省に相当)梁山支庁と金海市は、企業の倒産などで従業員が賃金を受け取れない場合、国が代わって一定範囲の賃金などを支払う「代支給金制度」による支援対策を検討している。

キム・ジュンホ記者

ホーム TOP