▲イラスト=UTOIMAGE

 中国の研究チームが「実験室で『致死率100%』の新型コロナウイルス変異株を作った」と主張している。米紙ニューヨーク・ポストが17日(現地時間)、「中国の北京化工大学や南京大学医学部などの共同研究チームが『センザンコウの新型コロナウイルス「GX-P2V」を、ヒトから新型コロナ感染を媒介するたんぱく質を発現させて形質を転換したネズミに感染させた結果、すべて死んだ』という研究結果を発表した」と報道した。同紙の報道は、その恐ろしい結果はもちろん、中国で新型コロナウイルスの実験が行われたという内容だということで、インターネット上で大きな騒ぎになっている。

 なぜなら、新型コロナの世界的な大流行は2019年に中国・武漢で始まった上、武漢の研究所で実際にウイルスの研究が行われたとも伝えられたことから、「中国が新型コロナウイルスを作った」という陰謀論が今も絶えないためだ。

 今回の研究に対しては、「変異ウイルスの危険性を過小評価してはならない」という懸念と、「ピアレビュー(査読=同じ分野の専門家による研究評価)などの検証を経ていない発表なので、過度に不安に思う必要はない」という指摘が交錯している。どのようにしてウイルスを作ったのか、信頼できる主張なのか、事実ならどれほど危険なことなのか、5つの質問でひもといた。

Q1.論文にはどのような内容が書かれている?

 センザンコウの新型コロナウイルスは、もともとヒトに感染しても特に病気を起こさない。しかし、研究チームがセンザンコウの新型コロナウイルスを培養する過程で「GX-P2V」という変異ウイルスが生じ、このウイルスが人間にとって致命的である可能性があると明らかにした。研究チームは、ヒトの体で新型コロナウイルス感染を媒介するACE2タンパク質を発現させ、形質を転換したネズミを根拠に挙げた。形質転換マウスに変異ウイルスを感染させると、8日以内に実験用マウスがすべて死んだとのことだ。GX-P2Vに感染した実験用マウスは感染後5日目から体重が減少し始め、6日目には感染前より体重が10%急減した。目が白くなり、8日以内にすべて死んだ。ネズミの脳・肺・目などから相当量のウイルスRNA(リボ核酸)が検出され、脳で最も多く検出された。呼吸器を通じて感染したウイルスが脳を狙って移動するという意味だ。研究チームは「新型コロナウイルスがネズミにおいて100%、死を招く可能性があるということを示す最初の研究結果だ」と語った。

Q2.誰が論文を書き、どこに対して公開された?

 今回の論文は、北京化工大学、南京大学医学部、北京の中国人民解放軍(PLA)総合病院などが共同で作成した。中国人民解放軍病院が研究チームに入っていることに関連し、軍事用研究ではないかと懸念する声もある。ただし、論文が掲載された「バイオ・アーカイブ」は厳格な検証を経て掲載される学術誌ではなく、バイオ分野の研究者がピアレビューなしに作成した論文を自由に掲載する事前論文公開サイトだ。学術誌の論文は、投稿から出版まで半年以上かかるが、事前論文公開サイトは掲載されればすぐ、誰でも読むことができる。事実、新型コロナ大流行時、治療薬やワクチンを開発したという論文が一日に数十件ずつバイオ・アーカイブに掲載されたが、事実と確認されたケースはほとんどなかったくらい、信頼性に問題がある。昨年、物理学界を騒然とさせた韓国研究チームの常温超伝導体「LK-99」も物理学分野のアーカイブで公開された。

Q3.研究内容はどこまで信じることができる?

 新型コロナウイルスは細胞の培養過程で変異を起こすことが多い。構造が単純で外部の反応に脆弱(ぜいじゃく)なウイルスの特性のためだ。今回の研究でも、センザンコウから発見された野生のウイルスが細胞培養過程を経て変異を起こし、致死率の高い変異ウイルスに突然変異した可能性がある。韓国生命工学研究院のチョン・デギュン博士は「既存の新型コロナウイルスに感染したネズミたちも一部の実験ではすべて死んだケースがあるだけに、センザンコウの新型コロナ変異ウイルスに実験ネズミを感染させた時、100%死に至るということも十分にあり得ることだ」と語った。

Q4.ヒトへの感染は実際に起こり得る?

 ヒトに新型コロナウイルスを感染させるACE2タンパク質を発現したネズミを使用しているので可能性はある。しかし、ACE2タンパク質はヒトを新型コロナウイルスに感染させる一つの要因に過ぎず、ACE2タンパク質があるからといって絶対に新型コロナウイルスに感染するわけではない。また、同じ新型コロナウイルスでも感染する動物ごとに症状や致死率が千差万別に現れ、感染自体しない場合の方が多い。何よりも実験過程と結果が研究チームの主張通りにきちんと設計されたのかどうかは現時点では確認不可能だ。

Q5.科学界はなぜ懸念している?

 科学界は今回の論文に対して、生物安全基準や注意事項などが明確に記録されていないという点を指摘し、ウイルスが安全に処理されたかどうかを懸念している。チョン・デギュン博士は「ウイルスは常に実験者への感染などを通じて流出する恐れがあるため、各国で厳格な安全基準を設けている。どのような施設でどのように実験をし、ウイルスに感染した死体が適切に焼却されたのかどうかなどについて詳しく報告しなければならないが、今回の論文にはこのような内容が不十分だ」と説明した。変異ウイルスが適切に管理されていなければ、流出する可能性もあるということだ。

ファン・ギュラク記者、ユ・ジハン記者

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