社会総合
韓国政府「52万頭の食用犬、責任は農場主」…大韓育犬協会「1頭当たり200万ウォンの補償を」
今月9日に「犬食用禁止法」が韓国国会本会議で成立したことを受け、全国に残る数十万頭の食用犬処理を巡る問題が表面化している。食用犬を安楽死させるか、保護施設に送るべきとの意見が出る一方で、韓国政府は「責任を取るのは農場主」との考えだ。
韓国政府の調査によると、2020年2月の時点で犬肉を提供する飲食店は全国に1600カ所以上あり、食用犬の飼育農場は1150カ所以上あった。農場には少なくとも52万頭以上の食用犬が飼育されているという。
韓国農林畜産食品部(省に相当)は「安楽死は検討していない」とした上で「基本的に農場主が犬の責任を取らねばならない」「現実的に全ての犬を全て生かしておくことはできない」との立場だ。犬食用禁止法は、最終的に食用犬を飼育していないことを証明する「犬食用終息履行計画書」の提出を廃業や転業を検討中の農場主に義務づけている。犬食用禁止法は3年の猶予期間を定めているが、この3年以内に農場主らは食用犬を全て出荷、販売、あるいは新たな飼い主を探すしかない。農場主が犬を放置したまま廃業、あるいは強制的に殺処分した場合、動物保護法により刑事処罰を受ける可能性もある。
食用犬を飼育する農場主の団体「大韓育犬協会」は政府に対し「犬1頭当たり最大で200万ウォン(約22万円)の補償」を要求している。1頭当たりの年間所得を40万ウォン(約4万4000円)と計算し、その5年分の所得補償を求めているのだ。協会の主張を全て受け入れた場合、約1兆ウォン(約1000億円)の予算が必要になるという。
これに対して韓国政府は「200万ウォンという額は高く見積もり過ぎだ」「過去の土地収用時の事例では2年分ほどの営業利益を補償した」と反論した。政府は食用犬問題解決に向け農場主や動物保護団体などが参加する「犬食用終息委員会」を新たに設置し、調整を行いたい考えだ。
犬食用禁止法によると、今後食用を目的に犬を処理した場合、3年以下の懲役または3000万ウォン(約330万円)以下の罰金に処される。食用犬を飼育あるいは流通させた場合も2年以下の懲役または2000万ウォン(約220万円)以下の罰金となる。
補身湯(ポシンタン=犬鍋)を出す飲食店が集まる京畿道城南市の牡丹伝統市場では10日午後の時点で客の姿はあまり見られなかった。市場で健康院(健康食品の店)を経営する70代の店主は「ただ死ねということだ」「補償などに関心はない。今後どうやって生きていくか途方に暮れている」と訴えた。犬焼酎やウナギ汁などを販売する別の店主も「犬焼酎など犬に関連する商品は今後扱わない」「客もいないから売れない。フナのスープでも売るしかない」と嘆いた。大邱市北区の七星市場にある補身湯販売店も看板の「犬」「補身湯」などの文字をテープで隠した。ある飲食店主(70)は「70歳の高齢者が今後3年で何を身に付けて他の仕事ができるだろう。補償さえもらえれば明日にでも廃業したい」と述べた。
キム・スンヒョン記者、ノ・インホ記者