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WWEで成功した唯一の東洋人「グリーンミスト」TAJIRIが韓国で技術指導する理由とは(下)
口コミも広がった。昨年9月にソウル市中区区民会館でTAJIRIが出場した2回目の試合は有料だったにもかかわらず何と400人の観客が訪れた。2018年にPWSを創設し、先日TAJIRIと連続して対戦した韓国人プロレスラーSHIHO(32)は「外部の専門家、モデル、クリエイターなどとの協力を進め『落ち目の古いスポーツ』のイメージをなくすために努力している」「来年はプロレススクールを正式に立ち上げ、ヘルスククラブと同じように誰でも普段から気軽に体を動かせる場として運営する計画だ」と意欲を示した。
■「サブキャラクター」で誘いユーチューブで広める
16日午後には京畿道広州市昆池岩で別の新たなプロレス団体「AKW(旧韓国プロレスリング)」が広さ80坪(約260平方メートル)ほどの新しい体育館をオープンし、スペシャルイベントを開催した。五星紅旗(中国の国旗)を手に「中国の夢」を伝える共産党レスラーDONGSHENがリングに上がった。党への忠誠心を誇示するため試合前には電光板に必ず習近平・国家主席の写真を映しだし、フィニッシュの際には必ず「習近平スラム」という技を決める挑発的なキャラだ。もちろんこのキャラは意図したもので、このレスラーは現代コーポレーションに勤務する韓国人商社マンのキム・ドンヒョン(31)さんだ。中国に留学経験があるというキムさんは「国民感情を刺激し、観客をいらだたせるコミカルな悪役を演じたかった」「プロレスはレスラーのキャラが大きく影響するので、サブキャラクター(脇役)という最近のトレンドにも合致する。またテレビで中継されなくてもユーチューブがあるので広めやすい」と語る。
実際にプロレスはアマチュアレスリングとほとんど関係がない。ギミックと呼ばれる選手個人のキャラに従って演技を行う「脚本のあるドラマ」だ。善と悪に分かれて互いに争う「撃って撃たれる」戦いだ。個性的なキャラ、場外での非難の応酬、見ていてスッキリする勧善懲悪の結末などで今も米国ではWWEが大きな人気を集めている。一昨年本格的に活動を開始したAKWの共同代表を務めるヘイドン(本名、イ・ヘドン)=36=は「これまで韓国のプロレスはそのアクションの割にストーリーを伝える力が弱かった」「観客を会場に呼び込む魅力を発信するため、ユーチューブを通じて積極的にコンテンツを活用している」と説明した。
■スープレックスの練習を続ける恐ろしい姉御
再び平沢に話を戻そう。米国や日本とは違い韓国には女子プロレスラーがいない。しかしその状況も今後変わりそうだ。TAJIRIのワンポイントレッスンに参加した15人の練習生のうち5人が女性だった。ボーイフレンドと共に道場にやって来たイ・イェジンさん(34)は「運動を兼ねて雰囲気を体験してみたかった」と生まれて初めてプロレスの世界に足を踏み入れた。イさんは受け身やファイティングポーズなどの練習が終わった直後、体重が3倍はありそうな巨体の米国人オメルタと息を合わせて彼女を床に投げ飛ばす珍しい練習を見せてくれた。イさんは「今後も続けたい」と意欲を示した。
昨年10月にWWE女子王座となった韓国系カナダ人レスラーのゲイル・キム(46)を招待し、興業面も徐々に前面に出しつつある。ソウル市内のある幼稚園で英語講師をしているメロディさん(35)は「コスプレを楽しんでいると互いに少しずつ接点もでき、技術にも興味を持てた。将来のデビューを目標に去年の冬から練習を続けている」「相手をつかんで持ち上げ、後ろに投げ飛ばすスープレックスのような難易度の高い技術が好きだが、幼稚園の園児たちにたまにローリングなどの基本動作を教えることもある」と述べた。彼らは今この時点で間違いなく常人とは違っている。
平沢=チョン・サンヒョク記者