▲京畿道竜仁市器興区のサムスン・トレーニング・センター(STC)で昨年8月に開催された「Wフェスティバル・イン・ヨンイン」でバスケットボールを体験する児童/ニュース1

 韓国の児童生徒は世界で最も運動をしない。またコロナ渦当時のステイホームで体力はさらに低下し肥満も増えた。このような状況を受け、これまで小学校5年生以上の児童生徒を対象に実施されてきた体力評価について、韓国政府は今後小学校3年生と4年生も対象とすることを決めた。小学校1年生と2年生の教科に「体育」を新たに設け、夏と冬の休みにはスポーツキャンプを開催する。勉強とスマートフォンばかりの児童生徒たちにより多く運動をさせ、体力を向上させることが狙いだ。

 韓国教育部(省に相当、以下同じ)は12月26日、これらの内容を定めた「第3次学校体育振興基本計画(2024-28)」を発表した。

 教育部は小中高校で毎年1回実施する「学生健康体力評価(PAPS)」の対象を2026年以降は小学校3年生から高校3年生へと拡大する。かつて「体力テスト」と呼ばれたPAPSは現在小学校5年生から行われている。以前のように大学入試や高校入試の成績には反映せず、一部の学校でのみ体育の内申に反映されるという。PAPSの成績が低い児童生徒には必要な運動プログラムを提供する。韓国政府は来年から一部の学校で小学校3年生と4年生を対象にPAPSを試験的に実施し、2026年からは全ての小学校3年生と4年生へとその対象を拡大する方針だ。

 種目は文化体育観光部が成人を対象に行っている健康体力評価の種目と同一にする。今は成人の種目と少し違っているが、全く同じにすれば子供たちは大人になるまで自らの体力の変化を明確に把握することができる。また現在PAPSで4-5等級の低体力と診断された児童生徒にのみ体力教室への参加を促しているが、今後は希望する全ての児童生徒が参加できるようになる。

 教育部は小学校1年生と2年生の科目に「体育」を新たに設けることも決めた。現在小学校1年生と2年生は「楽しい生活」と呼ばれる科目で体育、美術、音楽を並行して学習しているが、教師によって体育の内容はかなり異なっている。そのため体育を教科として分離することで必要な時間を確保することにした。

 学校でのスポーツクラブも活性化を促す。中学校のスポーツクラブの時間は現在「3年102時間」だが、これを「3年136時間」へと30%拡大する。夏と冬の休み期間に参加できる「スポーツキャンプ」も新たに実施される。

 韓国政府が体育の拡大を決めた理由は、韓国の児童生徒たちは運動量が他の先進国に比べてあまりに少ないからだ。世界保健機関(WHO)が2019年に世界146カ国の11-17歳の児童生徒を対象に運動の実態について比較調査を行ったところ、1日平均60分以上、中間レベルの身体活動も行わない「運動不足」の割合は韓国が94.2%と最も高かった。つまり韓国の子供たちは同じ年代の世界の子供たちと比べて最も運動しないのだ。韓国では放課後に運動する児童生徒の割合も42.9%で、これは経済協力開発機構(OECD)が加盟国を対象に2017年に行った調査で最下位だった。

 とりわけコロナ渦の影響で自宅にいる時間が増えたことで、児童生徒の体力はさらに大きく低下した。PAPSで最も成績が低い4等級・5等級となった児童生徒の割合は2019年は12.2%だったが、22年には16.6%と一気に増えた。この期間、体重が適正よりも重い肥満の割合も25.8%から30.5%にまで増加した。

 専門家は「韓国では学校での運動量が少ないだけでなく、放課後も児童生徒たちは勉強ばかりで運動する時間が足りない」と指摘する。小学校低学年でさえいわゆる「先行学習」のため塾などを幾つも掛け持ちするケースが非常に多いのが韓国における子供たちの生活の実態だ。大学入試を目前に控えた高校生に至っては学校で運動などほぼしない。これに対して米国や英国など先進国では学校で子供が小さいほど体育の時間を重視しており、高校生たちも運動に熱心に取り組んでいる。

 成均館大学教育学科のペ・サンフン教授は「運動をたくさんすれば友人との関係が良くなり、校内暴力を減らせるのはもちろん、メンタル面でのさまざまな問題も減少するだろう」「体育はむしろ勉強にプラスになることを政府はもっと広く積極的に知らせるべきだ」とコメントした。

崔銀京(チェ・ウンギョン)記者

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