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北の市場「約7割が人民元使用」 脱北者対象に調査=韓国
【ソウル聯合ニュース】北朝鮮で貨幣の信頼度が低下し、チャンマダン(市場)で中国貨幣の人気度が北朝鮮貨幣の3倍に上るほか、本業の収入より副業の収入が上回る住民が増えたことが、聯合ニュースが入手した統一部の報告書で明らかになった。
統一部が脱北者から得た情報に基づきまとめた「北韓経済・社会実態認識報告書」(草案)には、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)が最高指導者に就任してから北朝鮮の「市場化」の実態を示すさまざまな情報が収録された。
新型コロナウイルス対策として国境を封鎖する前の5年間(2016~2020年)の脱北者の58.7%は、脱出する前に北朝鮮で中国人民元や米ドルなどの外貨を保有していたことが分かった。北朝鮮ウォンだけを保有していた脱北者は10.7%にとどまった。17.3%は現金を保有していなかった。
2000年以前の脱北者は、53.0%が北朝鮮に住んでいた当時に保有現金がなく、27.4%は北朝鮮ウォンだけ保有していた。外貨を保有していた人の割合は3.9%にすぎなかった。
15~20年の間に外貨保有率は13倍に急増した。
2010年以前(2000年以前、2001~2005年、2006~2010年)の脱北者の81.6~85.2%が市場での取引手段として北朝鮮ウォンを最も多く使用したが、最近の脱北者の場合はその割合が25.7%にとどまった。チャンマダンで主に中国人民元を使ったとの回答は、2000年以前の脱北者は6.4%だったが、2016~2020年の脱北者は68.4%に達した。
北朝鮮で生活費以外に使えるお金があったとの回答は、2000年以前の脱北者は7.8%にとどまったが、2016~2020年の脱北者は49.5%に上る。
政府系シンクタンク、統一研究院のチェ・ジヨン研究委員は、金正恩氏が最高指導者に就任した時期に本格的に進んだ「市場化」で余裕資金を保有する住民が増加したとし、「特に2009年に北の政権が断行した貨幣改革の失敗などの影響で深刻なインフレが起こり、北のお金に対する信頼が落ち、人民元やドルを保有し使用しようとする傾向が続いている」と説明した。
市場活性化に伴い、本業より副業が主な収入源になった住民も増え続けた。
2000年以前の脱北者の50%は、家族のうち主な所得者の主要な収入源が公式の勤め先から受け取った給与と回答したが、2016~2020年の脱北者はこの回答の割合が23.8%だった。2016~2020年の脱北者の69.4%は主な所得者の公式所得よりほかの所得が多かったと答えた。
深刻な上納・贈賄の慣行も確認された。2016~2020年の脱北者の39.0%は北朝鮮で月収の30%以上を幹部や政権に奪われたと回答した。違法行為が摘発されたときに「一般的に賄賂を渡す」との回答も82.3%に達した。「賄賂を渡さない」との回答は2.6%にとどまった。
同報告書は統一部が2010年から進めた「経済・社会深層情報事業」を通じて脱北者6351人から得た情報に基づき作成された。同事業の結果はこれまで3級秘密(機密)として統一部内部で北朝鮮社会を分析する際に活用されていたが、初めて報告書の形で一般に公開された。
脱北者の構成は性別(女性)や出身地(国境地域)に偏りが大きいため、事業結果が北朝鮮住民全体の状況と正確に一致するものではないが、北朝鮮社会の変化の流れを示す指標として意味がある。ただ、新型コロナ対策として国境を封鎖した後の北朝鮮の実態の変化はほとんど反映されていない。