▲食用目的での犬の飼育、食肉処理、流通などを禁じる特別法が国会で成立する直前の9日、京畿道城南市の牡丹伝統市場の家畜通りを取材した。/ユ・ジンウ記者

 9日正午ごろ、地下鉄水仁盆唐線の牡丹駅5番出口から外に出た。

 牡丹伝統市場方向に500メートルほど歩くと幅2メートルくらいの路地が出てきた。中の角を曲がって少し進むと都心ではめったに見られない店が並んでいた。「犬肉」「黒ヤギ」「雷魚」「野うさぎ」などだ。

 なじみのない動物の名前が目に飛び込んできた。路地に沿ってゆっくり歩を進めると健康院、農場、生肉などの言葉を使った店も幾つか出てきたた。雪が降っていたためか行き交う人はそれほど多くなかった。向かいの牡丹市場で買い物をしてからちょっと立ち寄るような人がほとんどだろう。多くの市民が行き交う市場とあまり人気のない路地。この奇妙なコントラストがもの寂しさを一層際立たせた。

 路地を入ってすぐの店の前に並べてあった鳥の肉がやたら大きく見えた。通常の大型スーパーとは違い、長く伸ばされた脚の肉が爪の付いたままの状態で売られている。ある店ではガチョウ、別の店では長く育てた鶏だ。この日は気温が例年より低く雪も積もって寒かったためか、ガチョウと老鶏の皮は少し赤みがかって見えた。

 犬肉店はすぐ見つかった。路地をもう少し奥に進むと犬肉を売る店が幾つも出てきた。牛や豚、ヤギとは違って犬肉に爪はない。誰が見ても犬肉だと一目で分かる。肉付きの良い他の動物とは違って何となく薄黒かった。毛をバーナーで焼いた痕跡もはっきり見えた。

 健康院や黒ヤギなどの看板がかかった店のほぼ半分で犬肉も売っていた。隠そうともしない。誰の目にもつく店の前で堂々と犬肉を積み上げて売っていたのだ。

 ただし看板に「犬肉」という文字はなかった。どの店も看板から「犬」という文字を消したようだ。犬を売るとは書いていないが、オープンケースには犬肉しかないような店も多かった。

 ただこれらを買い求める客は多くはなかった。30分ほど路地を回ったが、犬肉を持ち帰る客はほとんど見られなかった。店で直接価格を尋ねると、価格ではなく「何のために犬肉を買いたいの」と逆に聞かれた。「祖父が元気がない」と言うと「1キロ5万ウォン(約5500円)、1匹丸ごとなら30万ウォン(約3万3000円)」だという。「意外と高いですね」と言ってその場を立ち去ろうとすると、「食べたことないのか」と世間知らずとでも言いたげだった。

 かつてこの牡丹伝統市場の家畜通りは大邱七星犬市場、釜山亀浦家畜市場と並んで韓国の三大犬市場と呼ばれていた。ところが9日に取材した牡丹市場に以前のような活気は見られなかった。

 犬焼酎を売る健康院のスチーム器には煮えたぎる音も湯気もなかった。店に混じって営業している栄養湯の店もその名称を「黒ヤギ湯」としていたが、やはり閑散としていた。書き入れ時の昼食時間帯でも席の3分の1以上客がいる店はほとんどなかった。

 この日国会では食用目的の犬の飼育と食肉処理を禁じる「犬食用禁止法(犬の食用目的の飼育、食肉処理および流通などの終息に関する特別法)」が本会議で成立した。犬食用禁止法は食用目的で犬を飼育・繁殖し、食肉処理する行為はもちろん、犬または犬を食材として調理や加工した食品を流通・販売した場合も処罰される。

 今後は食用目的で犬を処理した場合は3年以下の懲役または3000万ウォン(約330万円)以下の罰金、飼育・繁殖・流通した場合は2年以下の懲役または2000万ウォン(約220万円)以下の罰金となる。合法と違法の境界線にあった犬肉販売が今後明らかに法律に反する行為となった。この法律は3年の猶予期間を経て2027年から本格的に施行される。

 牡丹家畜市場商人会には短くて20年、長い場合は40年近く犬肉を販売してきた店が多い。彼らにとって犬肉は数十年にわたり生活を支えてきた手段だった。今回成立した犬食用禁止法は数十年続いてきた彼らの生活を根本から変えてしまうだろう。

 大きな変革を前に家畜通りの店主たちからはさまざまな意見が聞かれた。一部は怒りを隠そうとしないが、その一方で「いくら犬肉にこだわっても、すでに時代の流れから大きく外れてしまった」と現状を認める声もあった。

 牡丹家畜市場商人会のキム・ヨンボク会長は「客はどんどん減っているし、その中でも犬肉を買い求める客は今や10人に1人か2人ほどだ」「この際犬肉の商売はやめて、黒ヤギを看板メニューにしようと思う」と語った。

 牡丹家畜市場商人会は2016年に城南市と「牡丹市場環境整備業務協約」を取り交わし、生きた犬を並べる行為、見える場所で食肉処理する行為をやめた。十数年にわたり続いてきた犬の食用問題を意識した決定だった。

 それから8年で生きた犬はもちろん、犬肉も扱えないほど市場を取り巻く環境は急速に変わった。かつて補身湯(ポシンタン=犬鍋)を売っていた一部の店の前ではその痕跡もなく、古い賃貸の看板や横断幕が風になびいていた。

 閉店したある補身湯食堂の隣で野うさぎやキジ、ガチョウなどの肉を販売するある商店主は「5年前に犬肉商売をやめた時点で、犬肉を買い求める若い人は1年に1人もいなかった」「法律で売るのを禁止してもしなくても、年寄りの客が来なくなれば長くはもたない。犬肉の店は消えるだろう」と語った。

 商店主らは「犬肉通り」という汚名を完全になくすため、今後この通りに黒ヤギ通りを立ち上げる計画を進めている。売るものさえ変えれば、毎月4と9のつく日に賑わう牡丹市場から多くの客がやってくると期待しているようだ。

ユ・ジンウ記者

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