「早起きの鳥は満員バスを避ける」

 毎日通勤する韓国の会社員の4人に1人は、このように考えて午前7時前に家を出ていることが分かった。通勤時に乗る満員のバスや、身動きできないほど人でぎっしりの地下鉄、亀の歩みのような都心のノロノロ運転が嫌で、朝早く職場に向かう「アーリーバード(早起き族)」たちだ。

 韓国統計庁は12月21日、通信大手SKテレコムと共に毎日通勤する会社員712万人のデータを分析した結果を発表した。7時前に家を出る「アーリーバード」の会社員は、通勤する人全体の24.6%だった。午前8時前に家を出る人まで合わせると50.8%に達する。通勤する会社員の半数以上が、夜明けごろには通勤を始めるというわけだ。統計庁が通勤時間と距離を具体的に調査・発表したのは今回が初めてとなる。

 職場に通勤する人の毎日の通勤時間は平均34.7分だった。このうち首都圏の通勤者の平均は40.3分だった。帰宅に掛かる時間(42.9分)を合わせると一日に1時間23分ほどを通勤に費やしているわけだ。通勤による移動距離は一日平均18.4キロだった。毎日午前6時50分にソウル・冠岳区新林洞の一人暮らしの部屋を出て、瑞草区良才洞のオフィスまで通勤するムンさんは「7時を少し過ぎただけで地下鉄は混雑する」として「働くことよりも『通勤』という行為自体の方がつらいという皮肉な現実」と話した。

 往復合計18.4キロという通勤距離は、韓国全土の会社員が毎日、京畿道高陽市の白石駅からソウルの光化門駅までの直線距離を移動するのと同じだ。特に、自宅が首都圏にある会社員の場合、通勤距離は20.4キロで、全国で最も長かった。これは、一山市のショッピングモール「ラ・フェスタ」から光化門までの距離と同じだ。

■「早起きの鳥もつらい」

 会社員のキムさん(34)は最近転職したが、その際に「自宅と職場が近いこと」を最優先に考えた。キムさんはここ3年間、毎日朝6時に起きてソウル市麻浦区から江南区の三成駅近くの会社に通勤するという苦痛を味わった。地下鉄の混雑を避けるために明け方に起きて、午前6時30分に地下鉄に乗り、帰宅する時には人波を避けるために地下鉄2号線の逆方向に乗り、ほぼ一周回って家に帰った。毎日往復で50キロを移動し、通勤と帰宅で計2時間30分を費やした。麻浦区近くの会社に転職したキムさんは現在、自宅から会社まで2.8キロの距離を20分バスに乗って通勤している。キムさんは「会社に近いのが最高」「通勤に全てのエネルギーを費やしていた昔とは違い、生活に余裕ができた」と話した。

 韓国政府は2021年12月「第2次国家基幹交通網計画」を発表し、30年までに通勤に掛かる時間を30分台後半まで減少させる方針を示した。統計庁によると、首都圏の通勤者は依然として通勤に40.3分、帰宅に42.9分掛かっている。午前9時までに出勤しなければならない通勤者は8時までには出勤準備を終える必要があり、渋滞や満員電車を避けたい場合は、家を出る時間を早めるしかない。やむを得ず「アーリーバード」になっているわけだ。

 地域をまたいで通勤する人が多いという理由もある。自宅と職場が同じ地域にある人の割合が最も低いのは、世宗市(56.8%)だった。世宗市の居住者のうち20.9%は大田に、10.3%は忠清南道に通勤していた。世宗に新築マンションなどが建設され、大田や忠清南道など周辺地域に職場がある人たちが世宗に大量に引っ越したことが影響しているとみられる。

 このほか、自宅と職場が同じ地域にある人の割合が低いのは、仁川(68.7%)、京畿圏(74.7%)、ソウル(81.4%)だった。京畿圏に自宅がある通勤者の5人に1人(21.5%)はソウルに通勤していた。京畿道竜仁市器興区に住む会社員キムさん(28)は、毎日午前5時30分に起き、直線距離だけで35キロあるソウル・光化門近くの職場まで通勤している。キムさんは「朝10分でもゆっくりしていると、会社に着く時間が20-30分遅くなる」と話した。

■長距離通勤「健康に悪い」

 通勤による疲労感は想像以上だ。仁荷大学病院のイ・ドンウク教授(職業環境医学科)の研究チームによると、通勤時間(帰宅所要時間を含む)が一日60分以上の人は、通勤時間が30分未満の人に比べ、うつ病を発症する可能性が1.16倍高いことが分かった。研究チームは「通勤はそれ自体が心理的・肉体的ストレスを誘発するだけでなく、時間的余裕を奪うため、健康に悪い影響を及ぼす可能性がある」と説明した。

 2019年に金浦都市鉄道(愛称:金浦ゴールドライン)が開通したのに続き、昨年にはソウル軽電鉄新林線、今年は西海線など新たな交通網が続々と整備されているが、通勤地獄の解消には至っていない。定員の290%を超える超過密ラッシュで悪名高い金浦ゴールドラインは「金浦重病ライン」とも呼ばれている。金浦ゴールドラインで通勤すると、体が衰弱するという意味だ。最近も乗客らが呼吸困難を訴えていたことが分かった。

 専門家らは、都心の交通網を大幅に再編する必要があると指摘する。亜洲大交通システム工学科のユ・ジョンフン教授は「韓国国内では今、GTX(首都圏広域急行鉄道)などの鉄道敷設が集中的に行われているが、鉄道は巨額の資金を投じなければならない上、管理も大変だ」として「広域バスを大幅に増やして自家用車で移動する人口を減らさねばならず、そのために通勤バス専用車道を拡大する方策を検討する必要がある」と指摘した。

 オフィスが集まるエリアの周辺に、通勤者らが住める環境を整えるべきとの意見もある。漢陽大都市工学科の李昶武(イ・チャンム)教授は「過密開発を懸念して郊外にばかり目を向けるのではなく、ソウルでも職場が密集するエリアの周辺では住居の供給量を増やすなど、(職場への)接近性を高める政策が必要だ」と指摘した。

カン・ウリャン記者、ファン・ジユン記者

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