昨年12月10日(現地時間)、フランスのプロサッカーチーム「パリ・サンジェルマン(PSG)」の本拠地、パルク・デ・プランス(Parc Des Princes)。PSGとFCナントの試合が始まると、ピッチをぐるりと囲むフェンスの広告板に「アンニョン! パリ・バゲット」というハングル文字が発光ダイオード(LED)ライトで表示された。韓国のベーカリー・チェーン「パリ・バゲットがPSGのホームゲームにハングルの広告を出したのだ。この日、スタジアムを埋め尽くした観客は約4万人。この試合は全世界72チャンネルで生中継された。また、アクラフ・ハキミ、キリアン・エムバペ、ウスマン・デンベレ、カルロス・ソレールなど世界的なスター選手を有するPSGは同月3日、ル・アーヴルとのアウエーゲームの時、ハングルで名前が書かれたユニホームを選手に着せた。パリ・バゲットを抱える韓国の食品企業SPCグループとPSGがハングルによるマーケティングに乗り出したのは、同チームに韓国人選手の李康仁(イ・ガンイン)がいるからではない。PSGの関係者は「李康仁選手の入団以降、韓国人ファンが増えたのもあるが、韓国以外の世界中のファンたちも今では韓国語になじんでいる。ハングル名のユニホームに対し、フランスのファンの間では『面白くて新鮮だ』という反応が多かったからだ」と説明した。

 K-POPを前面に押し出した韓流ポップカルチャーや韓国企業商品の影響力が全世界に広がるにつれ、ハングルも世界各地で使われるようになりつつある。「アンニョン(こんにちは/バイバイ)」「オッパ(お兄さん/女性が年上の男性を呼ぶ語)」「テバク(大ヒット/すごい)」などの韓国語を隣国である中国・日本・東南アジアはもちろん、米国・欧州・アフリカの人々までも自然に話したり、使ったりする。グッチやルイ・ヴィトンなど世界的な高級ブランドもハングルそのものを商品のデザインに利用している。ハングルは今や、どこへ行っても自然に使われる「Kアルファベット」になったのだ。

 ハングルを使っているのは、韓国のアイドルにはまっている一部の熱狂的なファンだけではない。交流サイト(SNS)の発達はハングルのグローバル化の急速な拡大に火をつけた。2021年には韓流コンテンツと関連して作成されたX(旧ツイッター)のコンテンツだけで78億件に達した。K-POPや韓流ドラマのファンたちが「オッパかっこいい」「オンニ(お姉さん/女性が年上の女性を呼ぶ語)かわいい」などの言葉をハングルで直接添えたり、書いたりしてコメントを寄せている。ファン同士でも「テバク」「ホル(はぁ)」程度はハングルでやりとりするのが日常的になった。

 ユーザーが5億人という外国語学習アプリ「Duolingo(デュオリンゴ)」によると、韓国語は全世界で5番目に人気が高い外国語だという。また、昨年12月15日付のGoogle Trends(グーグルトレンド)によれば、全世界のインターネット・ユーザーがグーグルでハングルにより検索した総数はこの5年間で約3倍に増えたとのことだ。

 最近、欧州でハングルの看板やハングルのメニューを見かけるのはよくあることだ。英ロンドンのショーディッチ地区にあるフュージョン韓国料理店「オン・ザ・パプ」。メニューの「トッポッキ(餅の唐辛子みそ炒め)」「クンマンドゥ(焼きギョーザ)」「キムマリ(春雨をのりで巻いた天ぷら)」などの料理名はすべてハングルで書かれていた。その隣には現地の人々が読んで発音できるように「Toppoki」「Kunmandu」「Gimmari」という具合にアルファベット表記が付けてある。同店のイ・ソンジョン代表は「以前は外国人がどんな料理か理解できるようにトッ(餅)を『rice cake(ライスケーキ)』、マンドゥ(ギョーザ)を『dumpling(ダンプリング)』と書いた。しかし、今は外国人客がハングルのままの名前を知りたいと思っていて、かなりの数のメニューは説明しなくてもほとんど知っている」と話す。

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