▲韓国製超音速戦闘機KF21「ポラメ」の試作機/ニュース1

 韓国製超音速戦闘機「KF21ポラメ」開発事業のフィージビリティスタディ(採算性や実現可能性などの調査)や今後の方向性に関する調査研究などを総括していた韓国国防研究院(KIDA)の先任研究員が先日過労で倒れ、「脳死状態」となっていることが22日までにわかった。韓国製弾道ミサイル「玄武」の開発を担当した韓国国防科学研究所(ADD)研究員の殉職(21日に実験中の爆発で死亡)に続く残念な知らせだ。

 一連の事情に詳しい複数の情報筋によると、KIDAの武器獲得事業責任者で分析チームのリーダーだったコ氏(52)が先月末、東大門区のKIDAで体調不良を訴え早退し自宅で倒れた。コ氏は病院に搬送されたが脳死判定を受けたという。コ氏は先任研究員でトップの職責となる責任研究委員で、KF21戦闘機事業では分析チームのリーダーを務めていたが、最近はKF21初の量産に向けたフィージビリティスタディの担当となり非常にストレスを受けていたようだ。コ氏が率いる研究チームが分析を行ったところ、KF21は性能にやや不十分な点が見つかり、最初の量産分を当初計画されていた40機から20機に減らした方が良いとの結果が出たため、コ氏は頭を痛めていたという。この結果は開発を担当するメーカー側の考えと相容れないことから大きな問題となっていた。

 KF21は今年1月に超音速飛行に成功し、第4.5世代戦闘機としての性能が立証されたが、空対地ミサイルの性能は現時点で不十分なため、引き続き開発を進めねばならないとの分析結果が出た。これに対してメーカー側は「量産の過程でミサイル性能も向上させれば良い」と主張しているため、妥協点を探ろうとコ氏はここ数日徹夜を続けていたという。上記の情報筋は「倒れたコ氏は何か自分がKF21開発にブレーキをかけたように誤解され、これが他の何よりも大きなストレスになっていた」「武器関連は全てが極秘のため、まともに説明もできずストレスがあまりに大きかったようだ」と伝えた。コ氏は武器システムの専門家としてこれまで20年以上にわたりKIDAに勤務してきた。コ氏を経て開発された武器だけで4-5種類になるという。

 国防政策と武器開発を担当する国策研究機関のKIDAとADDはK防衛産業で過去に例のない輸出実績を上げ、大いに盛り上がっていると思われがちだが、現実はただ喜んでばかりもいられない状況だという。ある関係者は「研究員らの過労死や退職が相次ぎ、研究所全体の雰囲気は暗い」と語る。KIDAでは2021年にある研究委員が勤務中に神経マヒの症状で倒れそのまま死亡した。21日に爆発事故が起こったADDでは2019年にもロケット燃料の実験室で爆発事故が起こり、先任研究員1人が死亡し5人の研究員が重傷となった。

 ADDはこれまで潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、高性能弾道ミサイル「玄武4」、「韓国型THAAD(高高度ミサイル防衛システム)」とも呼ばれる長距離地対空ミサイル(LSAM)などの開発に成功してきた。しかしこれらの兵器開発に関与してきた研究員らはここ5年間に140-170人が退職したという。毎年50人前後が退職している計算だ。ある研究員は「成果に対するインセンティブがないなど、その待遇は相対的に良くない。その上極秘の武器開発を担当しているため、個人の生活も制限されるからだ」と説明した。退職した研究員の多くは大学や民間企業などに転職しているという。

 KIDAのある元研究員は「ポーランドやオーストラリア、サウジアラビア、UAE(アラブ首長国連邦)などにK武器が大量に輸出されるその裏では、誰にも知られない場所で黙々と自らの使命を果たしてきた研究員たちの血と汗、そして献身があった」とした上で「21日に死亡したADD研究員に政府と軍が哀悼のメッセージを出したように、国が『隠れた主人公』たちの愛国心と献身を忘れず、格別な配慮を行いそれに見合った待遇を行うべきだ」と訴えた。

盧錫祚(ノ・ソクチョ)記者

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