社説
韓国与党非常対策委員長に韓東勲前法相、成否を分ける尹大統領との関係性【12月22日付社説】
韓国法務部(省に相当)の韓東勲(ハン・ドンフン)長官が21日に辞任し、与党・国民の力の非常対策委員長に就任することが決まった。韓元長官は法務部長官として野党・共に民主党から集中攻撃を受けてきたが、その明確な論理で逆に国民の間で人気が高まった。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と国民の力はこの点を高く評価し、今なお危機的状況にある与党の救援投手として韓氏に白羽の矢を立てたようだ。
しかし国民の力内部では韓氏の非常対策委員長就任に反対する意見も根強い。その反対理由をしっかりと理解することは韓氏と国民の力にとってもプラスになるだろう。その理由としてはまず韓氏が尹大統領と非常に親しいこと、尹大統領らと同じく元検事であること、論理的な争いと政治は異なるということ、さらに政治経験が全くないことなどが指摘されている。
「韓東勲・非常対策委員会」の成否は尹大統領との関係をいかに設定するかにあるといっても過言ではない。国民の力は大統領選挙に勝利してからわずか2年足らずで今回が3回目の非常対策委員会発足となるが、それは尹大統領の責任が非常に大きいだろう。尹大統領が設定した国の進むべき方向性は正しいが、尹大統領の一方的かつその場しのぎの指示、コミュニケーション不足、相次ぐ無理な人事、妻の金建希(キム・ゴンヒ)氏問題など、さまざまな要因で支持率が上がる気配は全く見えない。つまり今の非常事態は尹大統領自ら招いたにもかかわらず、その尹大統領と非常に親しい人物が非常対策委員長になるのは理にかなわない。
政府与党が危機にひんしている今の状況は金建希氏の不適切な行動など、その理由は全て明らかになっている。ところがこれらの解決策が一切提示されないままむしろ逆の方向に向かっているため、国民は失望し怒りをあらわにしているのだ。国民が失望しているのであれば、その民心を大統領に伝えることが与党の責務だが、これまでその責務はしっかりと果たされてこなかった。非常対策委員長に就任する韓氏が尹大統領と非常に親しいことは、与党内の指摘通りこれまでの垂直上下関係が今後も続くリスクが確かにあるだろう。ただその一方で他の人物よりもスムーズに大統領に言うべきことが言える関係に変わることも期待できるのではないか。
韓氏が委員長としてどちらの関係性を重視するかは近く明らかになるだろう。もし今の垂直関係がそのまま維持されるのであれば、韓氏はもちろん尹錫悦政権と国民の力全体にとって望ましくない結果を招く可能性が高い。逆に国民の変化を感知しそれを尹大統領に直言できるようになれば、韓氏の非常対策委員長就任に反対するさまざまな理由は一気に「杞憂(きゆう)」に変わるだろう。
韓氏の非常対策委員長就任に誰もが同意しているわけではないが、それでも一定程度の期待は寄せられている。その最も大きな理由は国民が既存の政治家たちに大きく失望しているからだ。韓氏は政治家としての経験は確かに全くないが、だからこそ韓国の政治に新鮮な刺激をもたらす役割も期待できるだろう。その点で例えば国会議員への行き過ぎた特恵の廃止といった果敢な改革の先頭に立ち、これを実践しある程度結果を残すことができれば、与党はもちろん韓国の政治全体にとっても一つのターニングポイントになるのではないか。