▲2022年8月、ナンシー・ペロシ米下院議長(当時)の台湾訪問時に実施された中国軍の台湾包囲演習の概念図。

 「中国が台湾に侵攻した場合、韓半島と在韓米軍の任務に及ぶ影響に備えている」

 ポール・ラカメラ在韓米軍司令官(韓米連合司令官)は昨年9月、ワシントンの韓米研究所(ICAS)主催で開かれたオンラインシンポジウムで「米国防総省と在韓米軍司令官は台湾侵攻に備えて韓国軍指導部と韓国の役割について話し合ったことがあるか」という質問を受けた。この質問に対し、ラカメラ司令官は「ご存じのとおり、司令官や指導者らはそのいかなることに関しても非常計画を立てる」としつつ、このような趣旨の回答を行った。在韓米軍司令官が、台湾有事の際の対応問題について公に言及するのは極めて異例だ。

■「2027年までに台湾攻撃の準備を終えよ」

 中国の習近平国家主席は今年11月、米中首脳会談で「数年以内に台湾に侵攻する計画はない」と表明したが、2027年ごろまでに中国が台湾を武力統一、すなわち台湾へ武力侵攻する可能性は小さくない-という見方は続いている。27年は人民解放軍創設100周年かつ、習近平主席の政権4期目が始まる年で、悪化しつつある経済など中国内部の問題が習近平主席に最悪のシナリオを選択させる可能性を高めているのだ。米中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ長官は今年10月、「習近平主席が『27年までに台湾を攻撃する準備を終えよ』という指示を軍に下した」と明かした。今年1月に台湾の呉ショウ燮外交部長は「中国の台湾侵攻の可能性がさらに大きくなり、その時期は27年になることもあり得る」と語った。

 専門家らは、軍事力では米国がまだ中国より優位にあるものの、中国は軍事力増強の速度、とりわけ海軍力やミサイル戦力などで米国を急速に脅かしており、有事の際に被害を克服する「回復弾力性」では米国よりも圧倒的優位を持つに至った状況を懸念している。キム・ジヨン海軍士官学校国際関係学科教授の分析によると、1945年の時点で24カ所あった米国の造船所は、今年11月現在で5カ所に減り、このうち大型の戦闘艦を建造できる造船所はたったの2カ所にすぎない。第2次世界大戦直後はおよそ6700隻に達していた米戦闘艦は、50年後の2000年には20分の1の水準となる318隻に減り、05年には300隻を割り込む水準になって、現在もなお300隻を下回り続けている。15年以降、米国は艦艇数で中国に追い抜かれ、30年になると中国が135隻ほど上回るものと推定されている。135隻といえば、世界の海軍力において5-6位の水準にある韓国海軍の戦闘艦の隻数を上回る数字だ。

■在韓米軍の二つの戦闘飛行隊を台湾に投入?

 実際に中国が台湾に侵攻する事態が起きた場合、在韓米軍をはじめ韓国も決して無関係ではいられない。在韓米軍のU2偵察機が2020年以降、たびたび台湾海峡に出動して中国軍の訓練などを監視しているのが代表的な事例だ。専門家らは「在韓米地上軍の投入は難しいだろうが、F16戦闘機など空軍力を台湾有事の際に投入する可能性は高い」と指摘する。今年1月に米国の戦略国際問題研究所(CSIS)が公開した中国の台湾侵攻ウォーゲームの報告書にも、在韓米空軍の四つの戦闘飛行隊のうち2隊が沖縄に移動配備され、後に台湾の戦線へ投入されるシナリオが含まれていた。

 空軍など在韓米軍が台湾事態に投入され、米国が支援を要請してきたら、韓国はどのように対応すべきだろうか。現在進行中のロシア・ウクライナ戦争、イスラエル・ハマス戦争と共に中国の台湾侵攻も同時に起きた場合、韓国の対応は難しいものになる。特に、中国が台湾に侵攻した場合、米国の戦力を分散させるため北朝鮮の挑発を「けしかけて」、局地戦など深刻な挑発で事実上「四つの戦争」が同時に展開する最悪の状況にも備える必要性がある、という主張も出ている。現在、米国は二つの戦争の支援すら手に余る状況なので、3ないし4の戦争が同時発生したら、米国による韓半島大規模支援は事実上不可能になるとみられる。

 尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領も昨年9月、米CNNテレビのインタビューで「中国が台湾を攻撃した場合、米国の要請で台湾防衛を支援するか」という質問に対して「もし中国が台湾を攻撃したら、北朝鮮もまた挑発する可能性が極めて高い。その場合、韓国では強力な韓米同盟を基盤として北朝鮮の挑発に対応することが最優先の課題になるだろう」と答えた。

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