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北朝鮮軍射殺事件 「文前政権が状況放置・事実歪曲」=韓国監査院
【ソウル聯合ニュース】韓国監査院は7日、文在寅(ムン・ジェイン)前政権時の2020年に朝鮮半島西側の黄海上で韓国の男性公務員が北朝鮮軍に射殺された事件について、文政権が射殺前に手を打たず放置し、事件後には関連の事実を隠蔽(いんぺい)、歪曲(わいきょく)したとする最終監査結果を発表した。
この事件では、海洋水産部所属の公務員だった男性が20年9月22日に北朝鮮に近い韓国北西部の延坪島付近で漁業指導船乗船中に行方不明となり、翌日に北朝鮮側海域で北朝鮮軍に射殺された。監査院によると、政府は男性が死亡するまで対応を取らず、北朝鮮軍が男性を射殺して海上で遺体を焼いた後は事件を隠して男性が自ら北朝鮮に渡る「越北」をしたと事実をゆがめた。
同院は、事件を巡り違法・不当行為に関与した13人について懲戒・注意を要求し、今後公職に就く際に不利益となるよう懲戒理由を人事記録に残す措置を取った。13人の中には、当時の国防部長官だった徐旭(ソ・ウク)氏や海洋警察庁長だった金洪熙(キム・ホンヒ)氏らが含まれているとされる。
◇男性の死亡前に発見も放置
国の危機管理の司令塔である国家安保室、海洋警察、統一部、国防部、情報機関・国家情報院(国情院)などの関係機関は、男性が生きている間に事実上、何も手を打たなかったことが明らかになった。
監査院によると、国家安保室は20年9月22日午後、軍合同参謀本部から北朝鮮側海域で公務員が発見されたという報告を受けたが、南北関係を扱う統一部などにこの危機状況を伝えなかった。当時の国家危機管理センター長は、北朝鮮がこの男性を救助すればそれを報告するだけで済むと判断したという。
海洋警察は当日午後6時ごろに国家安保室から状況を伝えられたにもかかわらず、保安維持を理由にさらに情報を把握しようとせず、国防部などへの協力要請もしなかった。また、統一部の幹部は国情院からの通知により黄海上で男性の生命が脅かされていることを把握したものの、長官や次官に報告しなかった。
軍合同参謀本部も当日午後4時台に状況を把握したが、「統一部が主管すべき状況であり、軍では対応することがない」と国防部に報告した。国防部はこれに対し、北朝鮮に通知文を送る必要性や軍で取れる手立てを検討せず、国家安保室に申し入れることもしなかった。
◇射殺後は「自ら越北」と事実歪曲
監査院によると、北朝鮮が男性を射殺して遺体を焼いた後、関係機関はこれを公にせず、責任を逃れるため関連資料を削除・改ざんして男性が自ら越北したと事実をゆがめた。
9月23日午前1時に開かれた関係閣僚会議で、男性の遺体が焼かれたことについて国家安保室が「保安維持」の指針を出すと、国防部は同2時半ごろ合同参謀本部に関連の機密資料を削除するよう指示した。
統一部は事件を最初に把握した時点について、実際は国情院から通知を受けた9月22日午後だったにもかかわらず、国会やマスコミには23日未明の関係閣僚会議で把握したと虚偽を伝えた。
国防部や国情院、海洋警察はいずれも、男性が越北したとの判断が事実と異なることを知りながらも、これに従った。政府は当時、男性が自主的に越北したとたびたび発表したが、監査院はこれに対し「事実と異なる内容だけでなく、被害者の私生活まで不当に公開した」と非難した。
監査院は昨年10月、この事件の中間監査結果を発表し、当時の国家安保室長だった徐薫(ソ・フン)氏、国家情報院長だった朴智元(パク・ジウォン)氏、国防部長官だった徐旭氏ら20人の捜査を検察に要請した。現在、裁判が進められている。